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【1月12日付社説】新成人の皆さんへ/自ら学ぶ力を身に付けよう

2025/01/12 08:10

 あすは成人の日だ。新成人の皆さんは、もう少しで長い勉強の日々から解放されると考えているかもしれない。それは大きな間違いだ。幸か不幸か、皆さんにとって学ぶことが大切となるのは、これからである。

 学力とは何だろうか。学校で教えられたことを覚えることと考えがちだが、実はそれは学力のほんの一部に過ぎない。例えば、心理学者の今井むつみさんは「自分で問題を発見し、考え、解決策を自分で見つける」能力こそが学力であると定義している(「学びとは何か」岩波新書)。

 日本の学校教育が、今井さんの言う課題を発見し、解決する力を重視しているには違いない。ただ、実際には入試などで良い点を取るため知識を覚えることの方に、より多く時間と労力を割いているのは否めない。

 社会で生きていく上で、難しい数学の問題や、歴史の年号が役立つという人は、ほんの一部である。学力とは記憶力と同じ意味であると考える人は、多くの人が口にする「学校での勉強が社会に出てから、何の役に立つのか」との言葉は正しいと感じるに違いない。それでも皆さんが学校で勉強するのは、学ぶ方法を身に付けるためだろう。

 社会に出てからの学びに科目はない。自分の仕事や家庭での暮らしをより良いものとするためには、何が必要で、それを得るには何をしなければならないのかを論理的に考えることが重要となる。

 学校の勉強が嫌いだ、嫌いだったという人は多いだろう。しかし、自ら課題を見つけて、その解決に必要な考え方や知識を集めていくのは、意外と楽しいものだ。

 学校にいるのに、知識だけを習得するのではもったいない。社会に出てから自ら学ぶのを助けてくれるノウハウを獲得することにも力を注いでもらいたい。

 皆さんがこれから生きていくのは、人工知能(AI)が発達した社会だ。これまで人が行ってきた仕事の多くをAIが担うとみられている。そのAIに欠けているのは、現段階で何をするべきかを自ら見つける力だ。それができるのは、やはり人以外にない。

 国際社会は混迷し、これまで通りに発展し続けていけるのかを不安視する声は多い。AI以外にも私たちの社会を変える要素は山ほどある。変化に対応するだけではなく、社会をどのようなものとしていきたいのかをしっかりと描ける力がより重要になる。自ら学び続けることで、より良い未来をつくっていこう。

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