県立ふたば支援学校が1月から楢葉町の新校舎で活動を始めた。前身は富岡町を拠点に、障害がある児童生徒の教育を担っていた富岡支援学校で、東京電力福島第1原発事故によりいわき市に移転を余儀なくされてから、14年ぶりの双葉地方への帰還となった。
いわき市での活動は小学部と中・高等部が別の場所にあり、多くの人数が集まっての交流や施設面で不自由な側面があった。新校舎は全員が集まるランチルームなど、児童生徒が落ち着いて学ぶことができるよう整備した。充実した環境が双葉地方に整ったことを踏まえ、学校移転に合わせて古里に帰還した家族もあった。
障害に対する特別な支援が必要な児童生徒のいる家庭にとって、支援学校の存在は、帰還や移住を考える上で重要な要素になる。県教委には、新校舎への移転を契機として、一人一人に寄り添う支援学校での学びをさらに充実させるなどの取り組みを進め、教育面から双葉地方の地域再生を後押ししてもらいたい。
ふたば支援学校には「さくら相談室」という地域支援センターが設けられている。学校の教員や支援員らが所属しており、双葉地方の小中学校との連携を図るほか、子どもの育ち方に悩みを抱えている地域の保護者からの相談を受け付け、進路などをアドバイスする役割も担っている。
教育現場では近年、コミュニケーションの取り方などで配慮が必要な子どもへの対応が求められている。専門的な知識を持った支援学校の教員が各学校を巡り、適切な学びや指導を提案、実践していくことは子どもの成長に大きな変化をもたらす。センターは現場の教員を手厚く支援し、双葉地方で多様な子どもたちがそれぞれの学校にいながら、安心して学ぶことができる体制を整えてほしい。
ふたば支援学校では、将来的な「農福連携」も視野に入れ、校内に菜園などを設けて児童生徒の農業体験を進めようとしている。話を聞いた住民から「農作業をするなら、うちの畑を使ってはどうか」などとの申し出があるなど、移転してきた学校と、地元の楢葉町を中心とした地域との関係が生まれつつある。
原発事故前に富岡町を拠点としていた時は、事業所や支援団体との連携により、職業体験や地元での就職を後押ししていく流れができていた。支援学校には、積極的に地域との結び付きを再構築し、児童生徒が卒業後も社会の中で自立して生活できる枠組みづくりを進めていくことを求めたい。