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【2月20日付社説】備蓄米の放出/持続可能な供給体制を築け

2025/02/20 08:00

 政府のコメ政策のひずみがもたらした価格高騰であり、対症療法では不十分だ。持続的な安定供給を見据えた仕組みを構築しなければならない。

 コメ価格の高騰への対応として、政府が備蓄米を最大21万トン放出する。3月半ばから放出を開始し、同月下旬から4月上旬にもスーパーなどの店頭に並ぶ見通しだ。流通円滑化を目的として備蓄米を放出するのは初となる。

 農林水産省によると、全国のスーパーでの平均販売価格は2月上旬現在で5キロ3829円で、前年同期の1・9倍にまで上昇している。価格上昇は昨夏ごろから急速に進んでいる。主食の値上がりは低所得者層への影響がより大きくなる。政府の市場への介入は抑制的であることが求められるものの、放出の判断が遅きに失した感は拭えない。

 農水省は高騰について、値上がりを見込んだ一部の農家や卸売業者らがコメを保有していることによる投機的なものとみている。ただ、今回の値動きについては、農水省が流通状況を適切に読み取れているとは言い難い。昨秋にもコメの品不足や高騰は一時的なものであるとの見方を示したものの、高騰は収まるどころか、より深刻化している。

 政府が一貫して備蓄米放出を否定していたことが、投機的な動きを強めたとの指摘もある。コメの流通量把握の精度を向上させ、備蓄米放出の影響について精緻に分析することで、今回のような問題を未然に防ぐことにつなげるのが大切となる。

 政府はこれまで、コメの値下がりを防ぐなどの目的で減反を進め、現在も転作に対して補助金を出すなどして生産量を抑制している。適正価格を維持する重要性は理解できる。ただ、多くの国民の主食がコメであり、十分な量を確保する必要があることを踏まえれば、コメ政策を需給バランスのみで考えるべきではない。

 管野啓二JA福島五連会長は備蓄米の放出に当たり「生産者おのおのが利益を享受でき得る措置を要望したい」と話した。高騰の遠因に、これまでのコメの価格が生産者に十分な収入をもたらすものではなく、生産コストを反映していないことがあるのは明らかだ。

 大切なコメが十分に供給される環境を保つには、生産者の意欲喚起が欠かせない。現在のように価格が急激に上昇するのは避けなければならないが、一定程度の値上げは許容されるべきだろう。適正な価格水準を探っていくことが重要となる。

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