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【3月4日付社説】子どもの自殺/社会全体が防止の担い手だ

2025/03/04 08:10

 生きてさえいれば、周囲が力を合わせて、死ななくて良かったと思えるようにしてあげられる可能性がある。今月は自殺対策強化月間だ。社会全体で子どもの自殺をなくしていかなければならない。

 2024年の小中高生の自殺者数は暫定値で527人(前年比14人増)となり、統計のある1980年以降で最多となった。厚生労働省のまとめによると、本県では、性別や学校別の内訳は示されていないものの19歳以下の6人が亡くなっている。動機・原因は学業不振や進路、いじめなどの「学校問題」、うつ病などの「健康問題」、保護者との不和など「家庭問題」が大半を占めた。

 中学生と高校生の女子の増加幅が大きいのが特徴だ。女子に限れば、原因・動機は「健康問題」が最も多く、4割超を占めている。

 男女の自殺につながりやすい問題の違いを考慮しながら、死にたい、自殺したいと考える恐れのある子どもを少しでも早く見つけ出すことが重要だ。

 子どもたちが多くの時間を過ごす学校の役割は極めて大きい。県教委は自殺対策として、教育相談の強化に向けた教員研修の実施や、スクールカウンセラーの活用などを掲げている。ただ、相談したい子どもの受け皿を用意しても、子ども側の動きを待つ形では、十分とは言えまい。

 うつ病など心身の状況の変化などを見逃さないためには、相談などに限らず、子どもらの生活態度の観察などを強化していくことが不可欠だろう。子どもらと接する教員には、一人一人が自殺防止の担い手であるとの意識を高めていくことが求められる。

 学校問題で悩んでいることに学校が気付いたり、家庭の問題で子どもが追い詰められていることに家族が気付くのは簡単ではないだろう。家庭は子どもが学校での生活で悩みを抱えていないか、学校は子どもの様子が変化しているときに、家庭環境の影響がないかを含め目配りしてほしい。

 自殺した子どもの半数以上は、自殺前の1年以内に自殺未遂歴があることが分かっている。この場合は、問題が生じていることがはっきりしている。家庭と学校で丁寧に問題の根を取り除いていってもらいたい。

 子どもは社会の鏡と言われる。自殺したいと考える子どもは将来に対して希望を見いだせていないということだろう。自殺の原因を子ども一人一人の状況に見いだすだけでは不十分だ。誰もが明るい将来を見通せる社会にしていくことも大切だ。

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