国軍と武装勢力に戦闘停止を促し、救命活動や被災者支援に全力を挙げる必要がある。
ミャンマー中部を震源とするマグニチュード(M)7・7の地震は日ごとに被害が拡大している。軍事政権によると、これまでに死者は2千人を超えている。現地に在留している日本人約2千人の中に連絡が取れない人がいる。
ミャンマーは2021年2月のクーデターで国軍が実権を掌握した。以来、国軍と民主派、少数民族の武装勢力との内戦が続き、政情は極めて不安定だ。国軍の市民弾圧による犠牲者も多い。そうした状況で、国民をさらに窮地に追い込む災害といえる。
現地は建物が倒壊し、無数のがれきが散乱している。がれきの中に埋もれた人が大勢いるとみられるものの、重機や医療関係者が足りず、救助活動がままならない状況だ。市民を弾圧している軍事政権下とはいえ、国際社会が一致協力し、支援を急ぐ必要がある。
軍事政権は経済制裁を科している欧米と対立し、東南アジア諸国連合(ASEAN)との対話も難航するなど国際的な孤立を深めている。2年前に大型サイクロンが襲った際、閉鎖的な政権は被害状況を明らかにせず、各国からの支援を制限するなどした。
今回は軍政を率いる総司令官が国際支援を歓迎すると表明した。それだけ自力では克服できない極めて深刻な事態にある。しかし民主派の政治組織が被災地での2週間の停戦を履行すると発表した一方、国軍は空爆を継続している。このような事態で戦闘を続けること自体、あきれるほかない。
友好国の中国とロシア、隣国のインドとタイが救助隊を派遣している。日本政府は軍事政権を承認していないが、できる限りの支援を行う用意があると発表した。当面は食料や医薬品などの物資供給に力を入れ、現地の安全が確認できれば、医療従事者らの派遣を進めるべきだ。
政権側が寄せられた物資を自らの支配地域だけに供給するのではないかとの懸念もある。対立する民主派などの支配地域にも必要な支援が行き届くよう、国際社会が監視する必要がある。
震源地から千キロ以上離れた隣国タイの首都バンコクでも強い揺れがあり、建設中の高層ビルが倒壊した。多くの建設作業員らが死亡するなど被害は大きい。
県内にはミャンマーからの労働者や留学生、タイからは観光で多くの人が訪れている。本県からも被災者の生活再建や復旧・復興への支援の輪を広げていきたい。