浜通りの活力向上と、サッカーJ2いわきFCのさらなる活躍の相乗効果を生み出す場になることを期待したい。
いわきFCを運営するいわきスポーツクラブ(SC)が、新たなホームスタジアムをいわき市の小名浜港に建設する計画を発表した。整備候補地はアクアマリンふくしまなどに隣接する県有地で、収容人数は8千~1万人程度を想定している。
敷地の3分の1程度は多目的スペースとしてイベントなどを開催できる場所にする。多目的スペースなどに備える機能を今後検討し、人が日常的に集まる施設にするとしている。
土地の利用に向け県との間で調整を進めており、2027年の着工、東日本大震災から20年となる31年のシーズン開幕までの完成を目指す。6月までに具体的な整備計画をJリーグに提出する。
いわきFCは16年の本格始動以来、破竹の勢いで下部リーグからJ2へ昇格し、いわき市を中心に高い人気を集めてきた。同市の象徴的な地域であり、東日本大震災で被害を受けた小名浜港でのスタジアム建設は、サポーターをはじめとする市民と同FCがより結びつきを強めることにつながる。
周辺にはいわき・ら・ら・ミュウなどの観光・商業施設が集中している。観戦などでスタジアムを訪れる人による周遊効果なども見込めるだろう。
ただ、実現に向けて課題は多い。一つはスタジアムへのアクセス環境だ。小名浜地区は駐車場が慢性的に不足しており、候補地も現在は駐車場で利用されている。観戦者の多くが車で来場すると想定すれば、駐車スペースの不足や、各方面からスタジアムに向かう道路の渋滞も懸念される。
もう一つは、スタジアムの収支をいかに安定させるかだ。同SCがスポーツ庁に提出した資料によると、新スタジアムは、収入の半分以上をスタジアムの利用料や施設内のテナント収入で賄うとしている。いわきFCのホームゲームは年間20試合程度だ。収支安定には、ゲームのない日にもイベントなどで集客力を高めることが最低限の前提となる。
交通などの環境整備には、行政の主体的な取り組みがどうしても必要となる。スタジアムの稼働率向上も、同SCの自助努力だけでは難しいだろう。新スタジアムをいわきの新たなシンボルとするためには、今後まとめる具体的な計画を通じスタジアムの有用性を示し、ほかの企業や行政などを巻き込んでいくことが不可欠だ。