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【4月8日付社説】プレDC/優れた素材引き出す好機に

2025/04/08 08:10

 本県で来春開催されるJR6社の大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」に先駆け、今月からプレイベント「ふくしまプレDC」が始まった。

 これまでDCはPRや誘客などで多くの実績を残している。コロナ禍で冷え込んだ本県の観光業は復活を遂げたとはいえない状況にある。まだ広く認知されていない素材に磨きをかけ、本県観光の底上げにつなげることが大切だ。

 プレDCは「自然」「食と酒」「歴史と文化」「体験と復興」がテーマで4~6月の期間中、各地でテーマに沿った280超の特別企画が行われる。JR東日本は食や自然を楽しめるイベント列車を運行するほか、日本酒やしょうゆなどの発酵文化に着目した発酵ツーリズムの企画などを展開する。

 プレDC開幕後、最初の週末となった5、6の両日は、県内のご当地グルメを楽しめるイベント列車が東北線、常磐線で運行され、大勢の乗客が沿線の食の魅力を堪能した。今後も車両両端に展望スペースを備えた観光列車「SATONO」などが運行される。

 縦横にさまざまな鉄道路線があるのが本県の強みだ。鉄路で来県する人を駅から観光施設や飲食店などにいかに誘導するかが地域経済への波及効果を左右する。バスやタクシーなど2次交通と連携し各駅で利用を促していくべきだ。

 やはり本県観光の魅力は食だろう。山海の豊かな食材と伝統の技を駆使した料理の数々を多くの観光客が楽しみにしている。ラーメンや海鮮料理など訴求性の高いものだけでなく、最近は価格や量で差別化を図る取り組みも人気を集める。地元でしか知られていない店舗やメニューに着目し、新たな名物に育てていく好機にしたい。

 食文化では本県特有の発酵ツーリズムが大きな可能性を秘める。最近は日本酒やチーズ、ヨーグルトなど発酵食品を組み合わせた土産物なども開発されている。こうした健康志向にかなった新たな商品や発酵文化の奥深さを伝える機会を設ける必要がある。

 観光庁によると、昨年に国内のホテル・旅館に泊まった人は延べ6億5000人と過去最多だった。円安でインバウンド(訪日客)が前年を38%上回ったことが要因だ。

 県は来年のDC本番で、1600万人の誘客を目標に掲げる。コロナ禍前の19年4~6月の1574万人をわずかに上回る水準だ。国内の主要観光地に比べ、本県は訪日客の受け皿に余裕がある。自治体や観光関係者は外国人への情報発信に注力し、目標を大きく超える結果を残してもらいたい。

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