大阪・関西万博が開幕した。日本での大規模な博覧会の開催は1970年の大阪万博、2005年の「愛・地球博(愛知万博)」に続き3度目となる。
高度成長期だった55年前の万博は、人類の明るい未来と発展を描いた。今回は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、社会の分断や格差、環境など人類共通の課題の解決策を探り、持続可能な未来につなげることを目指す。
158の国・地域が参加し、現在、戦時下にあるウクライナやパレスチナもパビリオンを設けている。各国の現状や多様な文化、価値観などを知り、お互いを理解し合える貴重な機会を生かし、困難な課題の解決につなげたい。
期間中は各国から首脳などが訪れ「万博外交」が行われる。政府は各国の橋渡し役を果たし、国際社会の融和に尽くしてほしい。
ピーク時には1日当たり22万人超が訪れるとみられている。運営する日本国際博覧会協会(万博協会)は「並ばない万博」を掲げており、会場に入るには事前予約するのが基本だ。しかし開幕日の13日は、多くのパビリオンや飲食店で長蛇の列ができ、通信障害により入場用のQRコードを表示できない事態も発生した。
国内外の遠方から高額な入場券を買い求め、事前予約したパビリオンに入れないようでは、来場者の不満が募り、日本の運営能力が疑問視されかねない。万博協会はテロなどの安全対策を含め、円滑な運営に万全を期す必要がある。
入場券の売り上げは伸び悩んでいる。前売り券の販売数は目標の1400万枚に届かず、8割程度にとどまる。地元は盛り上がりをみせているものの、国内全体の機運醸成は大きな課題だ。
当初の計画では約800億円だった会場運営費は、人件費の高騰などで1100億円超に膨れ上がった。運営費は入場料収入で賄う計画で、販売低迷が続けば赤字に陥る可能性が高い。販売低調は展示内容やイベントなどの周知が進んでいないことも要因だ。万博協会は情報発信を強化し、販売促進に取り組むべきだ。
本県は7月19日に県単独のブースを出展し、動画やパネルで東日本大震災と原発事故からの復興状況を伝え、本県の魅力やモモなどの農産物をPRする。復興庁は5月に震災被災地の住民の思いを来場者に発信するイベントを行う。
前回の大阪万博では、民間レベルでの国際交流事業が盛んに行われた。県や復興庁などには、海外からの来場者などの関心を高める取り組みに力を入れてほしい。