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【4月18日付社説】日米の関税交渉/合意のための譲歩許されぬ

2025/04/18 08:10

 主要国で最も早い交渉は、他国の交渉を左右する恐れがある。日本政府は不当な要求に安易に譲歩することなく、自由貿易の堅持を強く求め続ける必要がある。

 米政権の関税引き上げを巡り、日米両政府がきのう、米首都ワシントンで初めて交渉した。当初、日本の赤沢亮正経済再生担当相、米国のベセント財務長官による閣僚級の交渉とみられていたが、トランプ大統領との会談も設定される異例の展開となった。

 赤沢氏は、関税引き上げの見直しを求めた上で、日米の投資や雇用拡大に与える影響などを訴えたという。日本の自動車の安全基準や農産品輸入が交渉の主な議題となり、両政府は早期合意を目指すことで一致した。

 相互関税のうち上乗せ分は90日間停止しているものの、既に一律10%の関税は発動している。日米双方が交渉のテーブルに着き、早期合意を目指すのは当然だが、重要なのはその中身だ。

 米国は巨額の貿易赤字を抱えるとはいえ、金融市場の混乱や物価高など自国経済への打撃が想定される中、相互関税を発動する真の狙いが見えていない。米国に詳しい説明を求め、納得できなければ毅然(きぜん)として撤廃を求めるべきだ。

 トランプ氏は、日本の防衛面の負担増を要求したという。通常の貿易交渉と異なり、米国は通商と関わりのない分野でも相手国にさまざまな要求を突き付け、取引を求めてくるとみられる。

 関税の撤廃や税率引き下げのため、安全保障など通商分野以外の交渉に踏み込み、相手に有利な取引に応じてしまえば日本の国益を損なうことにつながる。

 米国に対して70以上の国・地域が交渉を求めている。日本政府には、報復関税を辞さない構えの欧州連合(EU)やアジア各国などと密に連携し、他国の動きも踏まえ慎重に対応してもらいたい。

 報復関税を発動した中国に対し、米国は相互関税の税率を125%に引き上げるなど、報復応酬に歯止めがかからない。すでに中国は行き場を失った自国製品の市場を求め、東南アジア諸国との関係強化に動き出している。

 米国はベトナムやタイ、インドネシアに税率30%以上の相互関税を打ち出した。米国への輸出依存度が高いこれらの国々にとって巨大な中国市場は魅力だろう。中国と東南アジア諸国との経済的な結び付きが強まるのは、日米の安全保障上の懸念にもなりかねない。

 日本はアジア太平洋地域全体への影響も見据え、米国に再考を求めていかなければならない。

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