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【4月19日付社説】避難者の広域支援/見守り強化し孤立化を防げ

2025/04/19 08:05

 東京電力福島第1原発事故で県内に避難している人のうち、今も県社会福祉協議会による見守りなどの支援を必要とする対象者は約4万人に上っている。避難を経験した約16万5千人の4分の1に当たる。高齢、単身化が進む中、避難先で孤立してしまわないよう適切な支援を届ける必要がある。

 県社協は震災後、各地の社協に生活支援相談員を配置し、浜通りから避難した人の支援に取り組んできた。相談員は避難元自治体を拠点として各地の見守りに向かうが、1日の移動距離が100キロを超える場合もある。見守りは、部屋で倒れていた高齢者の発見につながるなど重要な役割を果たしているが、相談員の負担は大きい。

 県社協は、相談員の負担軽減などを図るため、避難先社協と避難元社協の広域連携を進めてきた。復興公営住宅がある自治体の相談員が巡回する際、入居者それぞれの地元の情報を届けたり、生活の変化を感じたら避難元社協に伝えたりして避難者を支えてきた。

 原発事故の被災地には帰還困難区域が残り、避難を余儀なくされている人がいる。避難先で生活することを決めた人にとって、相談員の訪問が避難元や社会との数少ない接点になっている場合もある。県社協には、支援を必要とする人に生活状況に応じたきめ細かな見守りを提供することができるよう、社協や相談員間の連携をさらに深めていくよう求めたい。

 県社協は、避難者が多い郡山市といわき市に、関係社協が集まる「社協連携避難者支援センター」を設置している。郡山のセンターでは、避難元と避難先の相談員が組んで訪問し、避難者が話しやすい関係を保ちつつ、助けになるような医療機関やイベントの情報を提供している。最近では、能登半島地震の被災県が支援のモデルにしようと視察に訪れた。

 県社協は来月、新たな支援センターを南相馬市と福島市に開所する。四つのセンターで活動が始まれば、県内で支援が必要な避難者の約6割をカバーできるようになる。県社協はセンターによる支援の好事例を相双、県北地方で共有し、避難している人の困り事を居住地の福祉介護などのサービスに結び付け、解消を図ってほしい。

 広域的な見守りを支える生活支援相談員は、「避難者地域支援コーディネーター」と合わせ県内に約120人配置されている。その人件費は、国の復興予算によって賄われている。国は、広域的な見守りのノウハウを持つ人材が分散することのないよう、中長期的に予算を確保してもらいたい。

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