任期満了に伴う郡山市長選は、元県議の椎根健雄氏が新人4人の戦いを制して、初当選を果たした。同市は県中心部に位置し、本県の商工業をリードする都市だ。同市が活力を高めていけるかどうかは、本県全体の経済や魅力向上に影響する。地方が人口減少や高齢化など共通する課題を抱えるなかで、椎根氏が経済県都をどう導いていくのか注目したい。
椎根氏は選挙戦を通じて、トップセールスによる農産物の販路拡大や医療機器産業の集積促進などの経済振興策を打ち出した。小中学校給食費の全額公費負担の継続などを通じて子育てしやすい環境を整えることで、若い世代の定着を図るとしている。
経済対策と人口減対策は、市勢を発展させる上で車の両輪だ。産業の振興が人を呼び込み、人が産業を支える好循環を生み出すことが求められる。
郡山市は県中地方の生活圏、経済圏の中心にある。同市の活力が失われれば、周辺の市町村への影響も大きい。産業の担い手を同市に送り出すなどしている県中地方の人口が減少していくことを踏まえれば、隣接する16市町村とつくる、こおりやま広域連携中枢都市圏の結びつきを強めていくことが不可欠だ。
椎根氏は福島民友新聞社のインタビューに対し「医療や仕事、学校など周辺市町村と相互に関係する部分も多い」として、周辺の市町村の首長との話し合いを重視する考えを示している。椎根氏には中心となる市の首長として、ほかの市町村と互いに利益をもたらし、必要な機能を補い合う関係の構築に努めてほしい。
椎根氏は「選挙戦で市民から寄せられた声をスピード感を持って市政に反映させたい」と抱負を述べた。例えば、利活用が大きな課題となっている市中心部の旧豊田貯水池跡地については、開成山公園や宝来屋ボンズアリーナとの一体的な整備を進めたいとしている。「音楽や文化、芸能などどういう機能が望ましいのか、市民の声を聞きながら方針を決めたい」との考えだ。
椎根氏は国会議員の秘書や県議として、行政の間近で長く活動してきた。政策決定の仕組みには精通しているだろう。ただ、今後は、行政の打ち出した政策を監視する側から実行する側へとその立場が変わる。選挙戦で訴えた「ひとりひとりが明日に希望を持ち、地域が輝く郡山」との理念を、一つ一つの政策を通じて、市民が実感できる形で実現させていけるのかが問われる。