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【5月6日付社説】自転車の安全/意識と環境を変えていこう

2025/05/06 08:05

 自転車利用者の安全に対する意識向上と、自転車が安全に走行できる環境の整備の両輪で危険な事故の減少につなげるのが重要だ。

 警察庁が、自転車で交通違反をした際に反則金納付を通告できる交通反則切符(青切符)制度を、来年4月1日に開始する方針を示した。反則金の金額を盛り込んだ道交法施行令改正案も公表し、走行中にスマートフォンを使用する「ながら運転」は1万2000円、イヤホンを装着し不適切な音量で音楽を聴くなどの違反は5000円とした。右側通行などは6000円、2台並んで走る違反は3000円だ。

 警察庁や県警のまとめによると、自転車の絡んだ事故の半数以上は、自転車側に何らかの違反があった。自転車を使う人が、車道などを走行する際のルールを理解していない、あるいはルールを守らなければいけないという意識が低いことを示すものだろう。

 警察は事故を減らすという制度開始の狙いに沿って、まずはルールを守らせることに重きを置いてもらいたい。

 青切符の対象となるのは、16歳以上の利用者となる。県内外ともに自転車の事故の当事者で最も多いのは17歳だ。普段の生活のなかで、この世代の若者が車道、歩道を問わず、ながら運転や、何台か横に並んで走る姿を目にしたことがある人は多いだろう。

 自転車は自動車と比べて速度こそ低いものの、ひとたび衝突すれば、エアバッグなどに守られることもないため重大な結果につながりやすい。運転免許を取得する前の世代に道路のルールを浸透させることが不可欠だ。なぜスマホのながら運転はほかの違反より反則金が高額なのか、大音量で音楽を聴く走行がなぜ違反の対象となったのかを、警察などが教える機会を設ける必要がある。

 自転車のルール順守を求めていく上で気になるのは、道路環境は自転車利用者からすれば、良好とは言い切れないところだ。

 車の交通量が多い市街地などでは、車道を左側通行するといっても現実的に難しい場所は少なくない。車道の左側に自動車が停車し路側帯をふさいでいるため、車道側によけるか、やむを得ず歩道に入るかするしかない場所がある。

 県内では、右側走行が多かった道路で、走行帯を色分けして進行方向を明示したところ、次第に左側を通行する自転車が増えた場所もある。警察を含めた行政には、道交法に沿った利用ができるよう、自動車利用者への自転車ルールの周知や、標識などを含めた環境整備が求められる。

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