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【5月7日付社説】みんゆう県民大賞/夢を信じ前に進んだ先駆者

2025/05/07 08:05

 県内で大きな功績を残した個人や団体を顕彰する、第35回みんゆう県民大賞(福島民友新聞社主催)の受賞者が決まった。困難や課題を乗り越え、自らの道を切り開いてきた受賞者の姿は、県民に夢を信じて前に進むことの大切さを伝えている。

 芸術文化賞には、郡山市出身の芥川賞作家、鈴木結生(ゆうい)さんが選ばれた。大学4年時に小説家デビュ

ーし、今年2月に自身2作目の小説「ゲーテはすべてを言った」で第172回芥川賞を受賞した。本県関係者の受賞は、20年ぶりの快挙だった。現在は西南学院大大学院(福岡市)で英文学を学びながら、執筆活動を続けている。

 鈴木さんは小学3年生で東日本大震災を経験し、大切な本や自作の漫画原稿などをかばんに詰めて避難した。当時を「物語に本当に救われた」と振り返り、そこで自分で創作する楽しさを見つけていったという。鈴木さんには、本県で過ごした思い出を胸に、読んだ人の心を打つような作品を生み出していくことを期待したい。

 スポーツ賞の大堀彩さんは、会津若松市出身のバドミントン選手で富岡一中、富岡高に在籍し競技人生の土台を築いた。長身を生かしたショットが武器で、アジアユースの日本人初優勝、全日本総合選手権での3度の準優勝などの実績を上げた。昨年のパリ五輪に出場し、女子シングルスでベスト8入りを果たして現役を退いた。

 大堀さんはキャリアを重ねる中で、2021年にB代表への降格を味わった。競技を楽しむ感覚も失ったが、現日本代表ヘッドコーチの父、均さんの「悔いが残るやめ方はするな」との言葉に奮起し五輪出場を勝ち取った。大堀さんは今後、競技の普及などに尽力するという。選手の気持ちを知る先輩として、後進を支えてほしい。

 ふるさと創生賞に選ばれたのは、サッカーJ2いわきFCを運営するいわきスポーツクラブ社長の大倉智さん。15年のクラブ創設時から社長を務め、「スポーツを通じていわき市を東北一の都市にする」というスローガンを掲げ、県社会人リーグから始まり、J2まで駆け上がってきたいわきFCの10年間の躍進を主導してきた。

 いわきFCは「90分止まらない倒れない」プレーを体現し、本県の震災復興のシンボルになっている。今年3月には、新たなホームスタジアムを小名浜港に建設する計画を発表するなど、次の10年に向けた動きが始まっている。大倉さんには変わらぬ熱意と指導力で、クラブの発展を浜通りや本県の活性化につなげてもらいたい。

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