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【5月10日付社説】消費税減税/将来に責任ある議論尽くせ

2025/05/10 07:30

 参院選を目前に控えるものの、国会は会期末までまだ時間が残されている。目先のことではなく、将来に向け、何が国民生活の支えになるかを真剣に議論すべきだ。

 野党第1党の立憲民主党が1年間に限り、食料品の消費税率を0%に引き下げる案を参院選公約に盛り込む方針を固めた。中低所得者への税控除と給付を同時に行う「給付付き税額控除」に移行するまでの措置と位置付ける。

 野田佳彦代表は首相在任中の2012年に消費税増税をまとめた経緯があり、減税には慎重な立場だった。しかし、参院選を控え、党内に物価高対策として減税を主張する声が高まり、方針転換を余儀なくされた格好だ。

 物価高に賃上げが追い付かず、個人消費が低迷するなか、食料品の消費税減税は苦しい家計の一助となり、消費を喚起するだろう。とはいえ消費税は医療や年金などの社会保障の財源だ。立民の案では年約5兆円の減収になる。野田氏は「赤字国債に頼らず、地方財政や未来世代に負担を及ぼさない」と述べているものの、財源確保や自治体財政の影響回避へ具体策はまだ明示されていない。

 現場の事務負担をいかに軽減するかも課題だ。消費支出の多い高所得世帯ほど恩恵を受けやすく、公平性にも疑問が残る。立民は、財源確保やさまざまな課題への対応策についても説明すべきだ。

 消費税の減税を巡っては、石破茂首相が消極的な姿勢だが、日本維新の会が2年間の食料品税率0%、国民民主党が時限的な一律5%への引き下げなどを主張している。公明党も飲食料品の軽減税率引き下げを検討しており、自民党も改選となる議員を中心に減税論が出ている。

 昨年の衆院選で、国民民主が「手取りを増やす」と減税や社会保険料の軽減を訴え、躍進した経緯もある。コメ高騰など物価高が国民の最大の関心事であるのは事実だが、各党が党内で丁寧に議論を重ね、減税を公約に打ち出そうとしているとは言い難い。

 そもそも主要政党全てが減税を打ち出せば、参院選での有権者の判断材料になり得ない。減税の実施で一致する方向にあるならば、各党は国の財政健全化や社会保障の在り方などへの考え方を示し、具体的な政策で議論を戦わすことが求められる。

 減税を実施するにしても法改正などの手続きを経れば、実現は来年以降になる。各党は、経済成長の低迷や物価高などの構造的な問題点を直視し、どう改革を進めるかも国民に示してもらいたい。

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