東京電力福島第1原発事故で被災した12市町村を支援する「福島相双復興官民合同チーム」が、活動開始から10年を迎えようとしている。事業者や農家との間で培ったネットワークを生かし、さらなる地域再生につなげていくことが重要だ。
チームは2015年8月、原発事故で被災した12市町村の事業者支援のために創設された。経済産業省や県、東京電力、地元金融機関などで構成し、それぞれの事業者を訪問支援してきた。3月末現在、約3割の事業者が古里に戻り事業を再開し、約2割が移転先での営業を始めた。約3割は休業中で、2割弱は引退した。
チームによれば、現在もまちづくりの状況を見定めて帰還を検討している事業所があるという。若手による起業や、地域外から進出してくる動きも出ている。チームには、10年間で蓄積した事業計画策定や補助金の利活用などのノウハウを提供し、事業者の帰還や12市町村での新規創業を後押ししてほしい。
チームは17年4月、農業者支援も開始した。チームが訪問した農業者への調査によると、営農再開済みは4割強、再開意向がある農家は1割弱、再開意向がない農家は約4割となっている。農家との密着した関係を構築したのが強みで、営農を再開した生産者にはスーパーへの販路開拓などを個別に支援してきた。
個別訪問では、再開意向がない農家の間で、耕作を休んでいる農地を誰かに貸したいと考える人が少なくないことが分かっている。一方、意欲ある農家や農業生産法人は、優良な農地を探している現状がある。チームには、市町村とともに遊休農地を担い手に橋渡しする役割を担い、12市町村での農地集約や経営の大規模化を進めていくことを求めたい。
原発事故による避難指示が解除された市町村では、公共施設の再開から始まり、公設民営施設の開設、まちづくり会社の設立などが行われてきた。チームは専門家を派遣するなどして支援してきた経緯があり、現在は関係人口拡大の分野をサポートしている。
関係人口の拡大を巡っては、民間も被災地での起業を考える学生らを集める事業などを行っており、市町村や民間団体と役割分担を進めることが必要だろう。チームは、いち早く帰還した事業者の高齢化による後継者問題など、震災から時間が経過したことで生じている対応が難しい分野を洗い出し、先手先手で解決する姿勢を忘れてはならない。