一人一人の子どもに応じた教育の必要性が指摘される中、通常の学級に籍を置きながら週に数回、別の教室で発達障害などに向き合う教育を受ける「通級指導」が注目されている。早期からの指導で子どもの学習や生活面の課題が解消されるよう、通級指導を受けやすい環境を整えることが重要だ。
通級指導は、通常学級で過ごす中で障害により何らかの困難を感じている子どもが対象になる。本県では注意欠陥多動性障害(ADHD)など6分野で行っており、昨年度は各地の小中学校に計155の教室が設けられた。教室では、それぞれの子どもが苦手とする人間関係の築き方や集中して物事に取り組むこつなどを学び、改善されれば指導は終了する。
文部科学省は、公立小中学校の通常学級にADHDなどの児童生徒が約1割在籍すると推定し、通級指導を有効な支援の一つとしている。県内の正確な統計はないが、配慮が必要な子どもは増えているという。市町村の教育委員会には、子どもが自分の課題を理解しながらも自信を持って学校生活を送れるよう、児童生徒の特性に向き合った指導を求めたい。
通級指導は、自分の学校に教室が設置されていない場合は、他の学校に通うことになる。他校に通って学ぶ場合は、保護者が子どもを送り迎えする必要があり、勤務時間の調整などが負担になっていた。福島市教委は本年度、この問題を解消するため、教員が指導の必要な子どもの学校に通う「巡回型」の取り組みを19校で実施することを決めた。
市教委には、保護者から「これまでは送迎ができないため、通級指導を受けることを諦めていた」との声が寄せられている。巡回型では子どもの移動がないため、通常学級で学ぶ時間を増やすことができる利点もある。県教委は市町村教委と連携し、福島市での事例をモデルに巡回型の指導を広げていくことを検討してほしい。
通級指導を巡っては、中学校卒業後も継続した支援が必要なことから、高校での設置も進められている。本県の場合、2018年度から県立校で始まり、教員や個別支援教育コーディネーターが連携して取り組んでいるが、昨年度は5校での実施にとどまっている。
発達障害などの背景を抱える生徒、あるいは高校に入ってから課題が顕著になった生徒への支援は今後さらに必要性が高まることが予想される。県教委には、義務教育から高等教育までを切れ目なく支援できる体制づくりに向け、人材確保に力を注いでもらいたい。