学校は子どもを育む場であると同時に地域社会の拠点となる施設だ。各教委には、学校を障害の有無にかかわらず、誰もが利用しやすい場所にしていく必要がある。
文部科学省のまとめによると、県内の公立小中学校573校のうち、車いすの人や乳幼児を連れた人などが使いやすいよう配慮された多機能トイレが整備されているのは、昨年9月現在で247校で全国ワースト2位だった。スロープなどによる校内の段差解消についても全国平均を下回っている。
文科省は、学校が大規模災害時に避難所として活用されることから、施設のバリアフリー化を進めている。トイレに関しては本年度中に避難所に指定されている全学校に整備する目標を示しているが、本県は4割強にとどまる。
東日本大震災で学校施設の多くが避難所として活用された本県は、バリアフリー化の必要性を重視してしかるべきだ。今後も大規模災害の恐れが指摘されており、バリアフリー化は喫緊の課題だ。
県教委は、多機能トイレやスロープの整備は、そうした設備を必要とする子どもが入学するのに合わせて行われ、在籍中の子どもに不都合は生じていないとみる。ただ、現時点でニーズがないとしても、障害のある子どもの保護者が自らの住む地域の学校に必要な設備がないことで進学先に悩むことなどがないよう、整備を進める必要があるとの考えだ。
ある市教委の担当者は「バリアフリー化は念頭にあるが、教室のエアコン設置などを先にということになりがちだ」と話す。既存のトイレが老朽化し、洋式化などを望む声も多い。少子化で将来的に統廃合の対象となるとみられる学校も多く、老朽化した校舎への設備投資が難しい面もあるという。
文科省は各教委にバリアフリー化に向けた計画の策定を求めているが、県内で計画を策定済みなのは2割弱だ。財政窮迫や少子化見通しなどの事情があっても、計画策定すらしていないのは問題の先送りだ。未策定の市町村教委は、計画をつくることで対症療法的な姿勢から転換すべきだ。
国は学校のバリアフリー化に向けた助成制度を拡充している。ただ、教育関係者からは、少額の整備が助成対象とならないなど使い勝手の悪さを指摘する声がある。学校改修を巡る国の助成で、県内の事業の多くが不採択となり不安視する声も出ている。県教委はこうした声を吸い上げ、国に見直しを促したり独自の支援策を打ち出したりすることで、市町村教委の取り組みを後押ししてほしい。