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【5月17日付社説】自治体カスハラ/不当要求防ぐ対応が急務だ

2025/05/17 08:10

 自治体職員の約3割が、過去3年間に住民や業者から理不尽な要求などを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)を経験している。総務省の調査で初めて分かった。民間企業を対象にした調査結果の1割を大幅に上回っており、自治体でのカスハラ対策が急務になっている。

 調査は、無作為に抽出した都道府県や市区町村の計388自治体を対象に実施した。カスハラ経験者は職種によって偏りがあり、広報広聴や各種年金保険関係、福祉事務所などの住民と接する部署では約6割の職員がカスハラに遭っている。これらの部署では、「ほとんど毎日」か「週に数回」と答えた人が1割近くになっている。

 総務省は、公務員が全ての利用者に行政サービスを提供する業務のため、民間企業に比べ過度な要求を受けやすいと分析する。カスハラ対応で職員の心身が疲弊すれば、サービスの低下につながる。各自治体は、公平公正な対応を旨としつつ、来庁者の言動が社会通念上許されない場合は、毅然(きぜん)とした対応を取ることが重要だ。

 県内では、会津若松市がマニュアルを作成してカスハラを防ごうとしている。働き方改革を議論する中で、職員から理不尽な要求についての対応を求める声が上がったことがきっかけだった。市は職員の名札を名字だけにして個人特定のリスク軽減を図ったほか、電話や窓口でのやりとりを録音できる機器などを導入する予定だ。

 政府は、カスハラ対応を義務付ける労働関連法の改正案を国会に提出しており、対象には自治体も含まれている。自治体には、先行して対策を講じている市町村や民間の事例を踏まえ、来庁者の相談の状況に応じて複数で対応する、行政への正当な抗議とカスハラを区別する仕組みを作るなどの取り組みを着実に進めてほしい。

 総務省の調査では、カスハラが発生した原因についても複数回答で聞いている。「利用者の不満のはけ口・嫌がらせ」が7割、「利用者の制度やサービスに対する理解不足や勘違い」は約6割となっている。一方で、職員の対応の誤りやシステムの不備などが原因となり、カスハラに発展した事例も2割弱の割合で発生している。

 福祉や年金保険など住民生活に密着している分野は、認定などの制度が複雑になっていることは否めない。自治体の職員は、誤解を与えない分かりやすく丁寧な対応に、行政サービスを巡るカスハラを防ぐ効果があることを踏まえ、窓口や電話での業務に取り組んでもらいたい。

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