屋外での作業が増える5月から8月にかけて死亡事故が多い。家庭菜園の愛好者なども自らの経験や体力、判断力を過信することなく、安全を意識して作業に取り組むことが大切だ。
農作業中の死亡事故が各地で頻発している。県内では昨年1年間に5件の死亡事故が発生した。過去10年間で平均8件起きている。
厚生労働省によると、農業は2023年の就業者10万人当たりの死亡者数が過去最悪の11.6人と、増加傾向にある。建設業の2倍超と全ての産業の中で最も多い。
農業従事者が減少するなか、増加している死亡事故の背景にあるのは高齢化だ。県内で昨年犠牲となった5人のうち4人は70代以上で、高齢になるほど、死亡事故のリスクは高まっている。
県が取りまとめた過去10年間の県内の死亡事故原因をみると、トラクターや耕運機、運搬車など農機具に関連する事故が全体の8割を占めた。乗車中の転倒や転落のほか、機械に巻き込まれたり、ハウスの支柱や樹木などの間に挟まれたりする事故が多いという。
年齢を重ねるごとに、平衡機能や視力などが低下し、さらに機械の操作方法や作業手順を誤りがちになり、事故を起こしやすい。
高齢者が無理な作業をしないよう家族らが目配りし、一人ではなく、複数人で取り組むことが事故防止につながる。トラクターなど農機具の点検中に起きる事故も多い。作業中に不具合が生じた際は必ず機械が停止した状態となってから確認するよう徹底したい。
乗用型トラクターは公道を走行することもある。福島市では4月に市道でトラクターの運転手が亡くなる交通事故があった。乗用車に比べて車両の安全対策は不十分だ。公道でなくとも、作業中はヘルメットやシートベルトの着用を忘れてはならない。
最近は家庭菜園でも農機具を活用する人が増えている。歩行型トラクターでは、後進時に体が建物などに挟まれるケースが多い。特に使い慣れていない機具を使うときは、周囲を確認してから作業を始めるよう心がけたい。
これからの時季は熱中症への警戒を怠れない。気温が20度を超えれば、屋外やハウス内での作業は注意が必要だ。積極的な水分や塩分の補給は当然ながら、「熱中症特別警報アラート」発令時は作業の中止も検討すべきだろう。
入梅以降は豪雨などで増水した水路や川に流される事故も起きている。水路の掃除などは雨が降る前に済ませておくことも、事故防止のために重要になる。