• X
  • facebook
  • line

【5月21日付社説】林業の人材確保/若手の定着で森を次世代に

2025/05/21 08:10

 県内で林業分野に新規就業した人数が、2021年から4年連続で100人以上となった。本県は森林面積が県土の7割を占めており、豊かな森林資源を活用していくために着実に林業の担い手を確保することが求められる。

 県によると、直近の24年に林業分野へ新規就業したのは111人だった。新規就業者の平均年齢は38歳で、45歳未満が7割近くなっており若手の就業が目立つ。出身地は県内が大半だが、県外からの就業者が1割になっている。

 県内の担い手は2200人前後で推移してきたが、65歳以上の割合は10年間で1割強から2割強に増えるなど高齢化が進む。林業は山の治水力を保持する公益的な役割を担うほか、今後は浜通りの森林整備などの需要が見込まれる。県は、環境保全や地域づくりに関心が高い若手の新規就業を後押しし、林業を将来にわたり持続可能な産業分野とすることが重要だ。

 県は、新規就業が100人以上となった背景に、22年4月の林業アカデミーふくしま(郡山市)の開講があったと分析する。1年かけて林業の技術を学ぶアカデミーの定員は15人程度で、修了生は県内で就業した。それに加え、開講を積極的にPRしたことで林業そのものへの注目が高まり、林業関係の企業や団体に就職する人も増えたという。

 ただ、アカデミーの今年の入講生は、過去3期の十数人から減少し、6人にとどまった。労働力不足により全業種で人材の取り合いが進み、ここ数年の「アカデミー効果」が相殺されてしまった可能性がある。県と林業関係団体は、学校や就職イベントなどへ足を運び、林業が就職やU、Iターンに伴う転職の選択肢となるよう改めて呼びかけることが必要だ。

 林業の現場は山の斜面などにあるため仕事の厳しさが指摘されてきたが、近年は高性能の林業機械が導入され、かつてのチェーンソーを主力とした作業と比べると効率化や体への負担の軽減が進んでいる状況だ。それでも、県内で林業に就業した人の3年間での離職率は5割近くに上り、他の業種よりも高い傾向にある。

 県は、森林組合や企業の中堅の働き手に対し林業アカデミーの短期研修などに参加し、働きやすい職場づくりを学ぶよう促している。また、最新の測量システムなど作業効率を上げる機器の導入を支援する補助制度を設けている。林業関係者は、現場作業の省力化と合わせ、賃金や休暇などの福利厚生面の充実にも心を配り、若手の定着率を高めてほしい。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line