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【5月22日付社説】江藤農相更迭/後手の対応に失望しかない

2025/05/22 08:05

 国民の政治への失望を増幅させる由々しき事態だ。辞任は当然であり、対応が後手に回った石破茂首相の責任は極めて重い。

 主食のコメの価格が高止まりし庶民の家計を圧迫するなか、「コメは買ったことがない。支援者の方々がたくさん下さるので、まさに売るほどあります」などと発言した江藤拓農相がきのう、辞任した。事実上の更迭とみられる。昨年の石破内閣発足後、衆院選の落選者を除き、閣僚辞任は初だ。

 江藤氏は「売るほどあるというのは言い過ぎた。受けを狙って強めに言ってしまった」などと釈明したが、米価高騰は国民の最大の関心事だ。その対応の渦中にある政治家の発言とは到底思えず、農政をあずかる閣僚としての資質を欠いているのは明らかだった。

 発言を耳にした国民の不信感や怒りなどを理解せず、いったん続投を認めた石破首相の対応も疑問だ。自身の商品券問題と同様に、国民感覚との大きな隔たりを露呈した。首相は「いかなる批判があっても、私が受け止める」と語ったが、国民の信頼回復は容易ではないことを認識してほしい。

 昨年夏からのコメを巡る政府の対応は、緊張感を欠いてきた。ス

ーパーなど小売店の商品棚からコメがなくなる状況に陥ったが、農林水産省は「新米が出回れば価格は下がり、品不足は解消される」との説明を繰り返した。与野党から要請があった政府備蓄米の放出にも消極的だった。

 しかし新米の流通以降も価格上昇は止まらなかった。農水省はようやく今年3月に備蓄米放出を始めたものの流通が滞り、まったく効果を得られていない。米価高騰は石破内閣の発足前からの動きとはいえ、これまでの政府の対応が後手に回ってきたことも、混乱を広げていると言わざるを得ない。

 県内も田植えが最盛期を迎え、本年産米の生産が進んでいる。主食用米は国内各地で昨年より増産される見通しだが、すでにJAや民間業者などで数量確保のための動きが活発化しており、昨年産より高値で生産者と契約するケースがみられるという。物価高に伴う生産コストの上昇を踏まえれば一定の米価上昇はやむを得ないだろう。ただ値上がりによる消費者のコメ離れなどが懸念される。

 石破首相は江藤氏の後任に小泉進次郎自民党前選対委員長を起用した。小泉氏は環境相に続き、2度目の閣僚就任となる。一刻も早く備蓄米の流通拡大を実現し、本年産米について、過剰な価格上昇を防ぐための具体的な対策を講じてもらいたい。

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