県内の各蔵元をはじめ、多くの関係者のたゆまぬ努力と研さんの成果だ。技術力にさらに磨きをかけ、県産日本酒の魅力をどう発信していくかに知恵を絞りたい。
2024酒造年度の日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会で本県は16銘柄で金賞を受賞した。都道府県別の金賞受賞銘柄数では昨年トップの兵庫県と同数となり、3年ぶりに日本一に返り咲いた。
本県は21酒造年度まで金賞受賞銘柄数で9回連続で日本一に輝いた。しかし、2年前は14銘柄で5位、昨年は18銘柄で兵庫に一つ及ばず、2位に終わった。それでも昨年の入賞数は全国最多の31銘柄と、県産酒の品質と造り手の技術の高さを証明していた。
今回の入賞銘柄数は30銘柄と新潟県とともに全国最多だった。各蔵元が情熱を持ち、懸命に酒造りに取り組んできた証しといえる。本県の酒造文化をさらなる高みに導いた関係者に敬意を表したい。
近年は多くの蔵元が使用する兵庫産「山田錦」など、酒米の高温障害による品質低下が酒造りを複雑にしている。特に昨年産米は硬く、コメと水の配分の見極めが難しかった。そうした状況でも県酒造組合の鈴木賢二特別顧問らを中心に各蔵元が密に情報を交換し、長年の経験と知識に基づく対策を講じ、例年と遜色ない酒に仕上げることができたという。
良質な酒米を県内で栽培し、十分な量を確保することも今後の酒造りに不可欠だ。県が開発した本県オリジナルの「福乃香」で金賞を受賞した蔵もある。県は高温に強い酒米の開発や普及に引き続き取り組み、酒蔵を支えてほしい。
主食用米と同様に、酒米の価格も高騰している。主食用米の値上がりで、栽培が難しい酒米からの作付け転換の動きもあり、酒米はさらに価格が上昇する可能性がある。山形県や福岡県では値上がり分の一部を補助する事業を行っている。酒米価格の上昇が蔵元の経営を圧迫しないよう、国や県は酒米の価格上昇や数量確保について支援策を検討してもらいたい。
インバウンド(訪日客)の影響もあり、国内外で日本酒の評価が高まっている。日本一の金賞銘柄数は有力な観光資源だが、県内の飲食店で提供していない店舗があるなど、まだ改善の余地がある。
本県は山海の幸に恵まれ、お酒を楽しむのに適した料理が多い。陶磁器や漆器などの酒器も多く製造されるなど、日本一の相乗効果が期待できる分野は少なくない。県や市町村、商工団体などは県産酒の情報発信や消費、流通の拡充に向けた施策を強化してほしい。