• X
  • facebook
  • line

【5月30日付社説】保護猫/共存に向けて環境を整えよ

2025/05/30 08:05

 行政が保護せずに地域で住民と共存させるための取り組みを強化し、殺処分が減る好循環をつくっていくことが求められる。

 県内で保護された猫などが新しい飼い主に譲渡される割合(譲渡率)が近年、良化傾向にある。2024年度の猫の譲渡率が過去最高の62%(710匹)となり、引き取り手がないなどの理由で殺処分となった数を初めて上回った。譲渡数が増えたことに加え、保護する猫が減ったことが奏功した。

 本県は保護した猫の殺処分数が全国最多となるなど、住民の生活環境の保全と、動物愛護の両立が課題となっている。継続して保護が必要な猫を減らす取り組みの徹底と譲渡数の増加を図ることで、殺処分を減らすことが重要だ。

 県は改正動物愛護法に基づき、猫が自力で餌を取るなどして生存できる場合や親猫が飼育している子猫などについては引き取りを拒否することにしている。ただ、引き取りの対象にならない猫がふん尿による悪臭の元となったり、ごみを荒らしたりしてしまえば、地域への悪影響が生じてしまう。

 このため、県は飼い主のいない猫について住民が主導する形で不妊去勢手術を行うことなどを軸とした「地域猫」活動の普及に力を入れている。住民が協議した上で、不妊去勢手術を施し、適正に餌を与えたり、トイレを用意したりすることで被害の低減を図る。猫は縄張り意識が強いため、地域に猫がいることで、新たな流入を防ぐ効果もあるという。

 飼い主不明の猫が増え、不妊去勢などを行って地域で世話をしたいという場合には、住民で話し合った上で、県動物愛護センターに相談してほしい。

 県は市町村の福祉部門と連携して、多頭飼育などにより飼い猫の世話が十分にできていない世帯を把握し、愛護センターなどが相談に乗る活動も進めている。こうした取り組みを広げ、引き取り数を減らすだけではなく、飼い主に適正な飼育を促していくことが求められる。

 猫は手術を施さずに、餌をやりながら放し飼いしていると、際限なく増えてしまいがちだ。飼っているつもりはなくとも、餌を上げている以上はその猫に責任を持つ、飼い猫については室内飼育を徹底するなど、意識改革を進めていく必要がある。

 県はこれまで譲渡に適さないとして殺処分の対象となっていた、離乳前の猫などについてもボランティアの協力を得て譲渡を増やしたい考えだ。殺処分の減少につなげてもらいたい。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line