福島民友新聞社と東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)は17日、震災と東京電力福島第1原発事故の記憶や教訓を後世に伝えていくための連携協定を締結した。両者は協定に基づき、震災に関連した資料の収集や活用、被災地の現状の情報発信などに協力して取り組む。伝承館が報道機関と協定を締結するのは初めて。
地震と津波、原発事故の複合災害の被災地である本県は、発災から14年が経過した今も廃炉や中間貯蔵施設にある土壌の最終処分、風評被害などが課題となっている。連携協定は、被災地の報道機関と震災の研究に取り組む伝承館が相互に連携することで、現在進行形の災害を伝えていくことを目的とする。
福島民友新聞社の過去やこれからの紙面を伝承館が資料として活用することで、県民目線の展示や記録、調査研究につなげる。両者の強みを生かして県内外の人に被災の実態や防災の重要性に理解を深めてもらうようなイベントを企画し、震災の記憶と教訓の風化防止にも取り組む。
締結式は双葉町の伝承館で行われ、福島民友新聞社の野崎広一郎社長と伝承館の高村昇館長が協定書を交わした。野崎社長は「防災の大切さや被災地の現状を広く発信する取り組みを進めたい」、高村館長は「連携により伝承館の知見や収集資料などを国内外の幅広い世代へ効果的に発信できれば」とそれぞれ意欲を語った。
「若い世代に教訓引き継ぐ」
福島民友新聞社と伝承館が17日に結んだ連携協定では、同館を震災の経験と教訓を未来へつなぐ場として、さらなる利活用を進めることを目指す。高村昇館長は、締結式で「幅広い世代への情報発信、特に若い世代に教訓などを引き継ぐことが強く求められる」と述べた。
伝承館は2020年9月の開館後、今月16日までに39万8356人が訪れている。外国からの来館者に対応するため、展示の多言語化なども行っている。一方、時間の経過とともに、被災地では老朽化した建物の解体などが進んでおり、震災関連の資料収集は年々難しくなっている。
このため、伝承館では震災前の生活や震災後の状況、復興の過程が分かるような記録や写真、映像などの寄贈、寄託を呼びかけている。
また被災体験の手記の収集や聞き取りなども進めている。協定により、両者はさまざまな資料の確保などを進め、本県が経験した複合災害についての情報発信の充実を図る。
福島民友新聞社の野崎広一郎社長は「震災の記憶と教訓を引き継いでいくことは、震災を体験した世代の責務」と語った。同社の菅野篤司論説副委員長が同館客員研究員として資料の収集などに取り組む。