サッカーJ3福島ユナイテッドFCを運営するAC福島ユナイテッドは30日、福島市に建設を計画している新スタジアムについて、エネルギー循環型の木造スタジアムにする構想とクラブエンブレムの変更を発表した。スタジアムは県産材を使用するなど、東日本大震災からの「復興の象徴としての木造スタジアム」となる。
エネルギー自給自足
「それでは、新スタジアムのコンセプトを発表します」。福島市のとうほう・みんなのスタジアムで行われたホーム戦の試合開始前、スクリーンに新スタジアムのイメージ図が示されると、観客席からは驚きや称賛の声が聞かれた。発表されたのは、屋根の形が特徴的な木造のスタジアムで、エネルギーの自給自足を目指す設計になっている。福島ユナイテッドによると、完全木造は日本で初めてで、雨水の再利用や雪の冷房への活用などエネルギー資源を循環する木造スタジアムは世界初という。
新スタジアムは2階建ての4面スタンド。観客がフィールドを近く感じられる空間にすることで、観客と選手の一体感を創出する。県産木材をふんだんに使用し、大内宿(下郷町)のかやぶき屋根が連続するような外観を計画する。分解や再利用が可能な部品で資源を有効活用し、建築段階から地域住民らが参加できる仕組みも導入する。
環境面も配慮した。福島の盆地型気候を生かして自然エネルギーを最大限活用することで、環境への負荷を減らす。日差しや風など、天候に応じて調整できる屋根や外壁を導入する。世界最高水準の環境指標「リビング・ビルディング・チャレンジ」の取得も目指すという。
小山淳代表取締役CEO(最高経営責任者)は「単なる競技施設ではなく、世界に希望と再生を届けるプロジェクト。復興は道半ばだが、復興の象徴とすることで未来への希望を創り上げたい」とコメントした。
新たなスタジアム構想に、サポーターは沸いた。福島市の会社員(44)は「斬新なデザインだ。スタジアムを持てるのはうれしいし、福島の復興する姿を多くの人に知ってもらいたい」と期待を込める。会津若松市の会社員(44)は「新しいスタジアムでの応援が楽しみ」と話した。
場所は「未定」
福島ユナイテッドは、スタジアムを設置する具体的な場所や時期は「未定」としている。J1スタジアムの特例基準とする入場可能者数「5000人以上」といった条件に合致する建設計画を進める方針。全容が明らかになった時、サポーターはさらなる夢や希望を抱くことになる。
エンブレム、来年変更
福島ユナイテッドFCは来年、新たなエンブレムを掲げて戦う。
新エンブレムは現在も使われている不死鳥のモチーフを踏襲し、よりシンプルで象徴的なデザインとした。炎の中で再生し、永遠に生き続ける不死鳥で、クラブの不屈の精神を象徴している。
来年はクラブ創立15周年、Jリーグのシーズン移行と節目の年になる。その年に、クラブ創設時から使用し、チームの「顔」ともいえるエンブレムを変更する。「これまでの歴史とアイデンティティーを継承し、新たな未来を描くためにリブランディングを進める」。そう決意を示した。