福島市の中心街にある信夫山で来月、健康寿命延伸に向けたプロジェクトが始まる。民家を改修してナノミストサウナなどの設備を設け、講座などを通して健康増進を図る計画だ。大病を経験して健康の大切さを実感した人のアイデアから生まれたプロジェクトで、趣旨に賛同した仲間が集まり、健康な人と活気があふれるまちを目指す。
緑に囲まれ、福島市を一望できる信夫山。その麓にプロジェクトの拠点となる「しのぶ山テラス」の整備が進む。千葉県のIT関連企業会長などを務める金子哲司さん(74)の実家を改修した。
プロジェクトのきっかけをつくった金子さんは「老若男女誰もが訪れ、楽しみながら健康寿命の延伸やコミュニティーの維持につなげたい」と意気込む。
金子さんは脳出血による後遺症で言語障害などがある。リハビリを通して、健康の大切さなどを実感。将来的な住まいとして考えていた実家を健康増進のための施設にすることを決めた。
施設には低温のナノミストサウナやカラオケ設備などを設置する。ナノミストサウナは室内が40度前後と低温で、サウナや入浴後と比べると、体温を維持してくれるという。体の芯から筋肉を温め、免疫力を上げることに主眼を置く。プロジェクトを中心になって担う福島医大の高橋仁美特任教授(66)は「温熱と運動を組み合わせることで、より効果を発揮するはずだ」と話す。
講座やリハビリも
そのほか、健康講座や予防リハビリなども行い、利用者が心身ともに健康になることを目指す。高橋特任教授によると、2022年の本県の健康寿命は男性が全国ワースト6位で、女性が同4位。施設を利用してもらい、少しでも改善することを目指す。
施設では地域通貨なども導入する予定だ。プロジェクトを進めるため、昨年8月に事業会社「しのぶ山テラス」を設立した。
プロジェクトを始める前、金子さんには気になることがあった。それは子どもの頃に「庭」のような存在だった信夫山が時代とともに荒廃していくこと。「信夫山を元気にしたい」。そんな思いで動き出したプロジェクト。「『ずっと動ける、ずっと元気』を実現し、子どもから高齢者まで笑い声が響く信夫山になってほしい」。金子さんはそう願っている。