いわき市のアクアマリンふくしま環境保全部環境学習グループサブリーダーの吉村光太郎さん(47)が、採取した深海生物を迅速に加圧治療できる「水中生物収容装置」の特許技術を取得した。深海生物は地上に移動する過程で減圧症になるなど生きた状態での採取は難しかったが、生存率向上につながるという。同館が21日、発表した。
装置はエアポンプ式で手動での加圧が可能。形状もコンパクトで、減圧症などの症状が現れた生物を船上でいち早く加圧治療できる。生物の負担を減らし、海洋生態や環境の解明が進み、地球環境の保全につながることが期待される。
深海生物の採取は、減圧症や温度変化などで目や内臓が飛び出したり、内臓が損傷したりするなどの懸念がある。これまでも深海生物を収容する装置はあったが、大き過ぎて船に乗せられないなど課題があった。
吉村さんは前職で潜水士の経験があり、同館に就職後は潜水士として、シーラカンス調査に貢献してきた。減圧症は人間にも起こる身近な問題で「深海生物の命を落とすことなく採取したい」との思いが強まり、2015年ごろから装置開発に向けて試行錯誤を続けてきた。
23年4月4日に特許を出願し、今年5月28日に登録された。吉村さんは「水深の深い場所の生き物は採取が難しく、犠牲になる生き物もいる。きれいな状態で展示できれば、一層、海洋環境に興味を持ってもらえると思う。最終的には環境保全につなげたい」と意欲を語る。