東日本大震災と原発事故を契機に、避難所の姿は大きく見直されました。その中で課題のひとつとなったのが、家族同然の存在であるペットをどう守るかという点です。
当時、多くの避難所ではペットの受け入れが難しく、やむなく置いて避難したり、車中泊を選ばざるを得ない人がいたことが報道などでも伝えられました。私たちが南相馬市で行った調査では、震災後数カ月間で犬にかまれて病院を受診する人が明らかに増加していました。犬自身も強いストレスを受けており、避難生活下で管理が難しくなっていた可能性を示しています。
さらに、ペットとの死別が飼い主に与える精神的ダメージも小さくありません。心理学の研究では、人間の家族の死別に近い強い悲嘆や孤独感をもたらす場合があることが報告されています。東日本大震災でも同様の体験をした住民が少なくなかったと伝えられています。
こうした教訓を踏まえ、国は2013年に環境省「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を策定しました。ここでは「同行避難」が原則とされ、避難所までペットと一緒に避難することが基本方針として位置づけられました。日本で初めて、国が明確に「ペットも共に避難するべき存在」と示した取り決めです。
もっとも、方針が示されたとはいえ、実際の避難所でどう運用するかには依然として課題が残されています。
