ようやく廃止が実現するとはいえ、代替財源の確保は結論を得ていない。与野党が責任ある議論を尽くし対処すべきだ。
自民、立憲民主など与野党6党が、ガソリン税に上乗せされる1リットル当たり約25円の暫定税率を12月31日に廃止することで正式合意した。軽油引取税の暫定税率は来年4月1日に廃止する。
野党が今年8月に共同提出した廃止法案を修正し、臨時国会で成立させる。高度成長期の1974年に、道路整備の財源確保のために始まり、これまで延長が繰り返された。2010年に法律上は廃止されたものの、名称を変更し、実質的に維持されてきた。
廃止に伴い、ガソリン代が安くなるのは、車の利用が欠かせない地方にとっては朗報といえる。物価高の要因の一つでもある物流費の低減も見込まれ、物価高対策としても期待できる。
現在はガソリンを安くするために石油元売りに1リットル当たり10円の補助金を出している。暫定税率廃止までは移行措置として補助金を使い段階的に価格を引き下げる。軽油の補助金も同様の措置を講じる。急激に価格が変動し、買い控えなどが生じるのを避けるには有効な策だろう。政府には混乱回避に向け、入念な対策を求めたい。
今後、早急に検討しなければならないのは年1兆5000億円に上る減収分の財源の確保策だ。年末までに法人税の優遇措置の縮小、超高所得者の負担強化策などを検討し、一定程度は手当てする方針だが、道路保全のための安定財源の確保策は、1年後に結論を先送りした。軽油引取税などの地方税の減収分も「速やかに結論を得る」とされ、見通しが立たない。
高度成長期の半世紀前と同様、地方では道路網の整備が求められている。加えて老朽化が進む道路や橋の維持管理、補修にかかる費用が増えている。暫定税率を廃止しても必要な財源は手当てしなければならない。政府・与党は安易に国債発行や自動車関係諸税の増税などに頼ることなく、恒久的な財源確保に知恵を絞ってほしい。
一部の野党は代替財源について「税収の上振れ分を充てる」としてきたが、これでは安定財源には成り得ない。景気動向などに左右されにくい具体案を示し、政府・与党と協議する必要がある。
ガソリンや軽油の価格下落に伴い、消費が増えれば、政府の脱炭素政策との整合性が問われることになる。環境性能の高い、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の普及、開発への取り組みをさらに加速させるべきだ。
