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【9月17日付編集日記】橋

09/17 08:10

 昔、現在の福島市に住んでいた娘が、若者の姿に変身した大杉の精と恋に落ちた。不吉に思った人々はこの大杉を切り倒し、福島城外堀の橋にすることにした

 ▼ところが、その橋から毎晩、娘の名を呼ぶささやき声が聞こえてくる。そのため人々は、大杉の橋を密語橋(ささやきばし)と呼ぶようになったとの言い伝えがある。橋はその後、土橋や石橋にとその姿を変えながら、現在も県庁南側にある会合施設の庭園に残っている

 ▼密語橋からほど近い荒川に架かる信夫橋。現在の橋は鉄筋コンクリート製だが、明治期に造られたものは石造りだった。アーチが13個連なった壮観な意匠から十三眼鏡橋と呼ばれた。錦絵にもなるほどの人気だったが、わずか数年で洪水により壊れてしまった

 ▼現在の橋の上流にあった民家の撤去工事現場で昨年秋、明治期の橋の遺構とみられる石組みが見つかった。橋面の高さまで道をかさ上げするための構造物だったと推定されるという。地元団体などが現状に近い形での保管を求めている

 ▼彼岸が近づき、道を歩いていても汗ばむことが減ってきた。散策にはうってつけの頃合いだ。地元の建造物の変化などをたどりながら、歴史のささやきに耳を澄ましてみてはいかが。

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