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【9月7日付社説】過去最大の概算要求/財政健全化を着実に進めよ

2025/09/07 08:10

 財政規律の緩みが許されるような状況ではない。将来世代への責任を自覚し、予算を編成していくことが重要だ。

 国の2026年度一般会計予算の概算要求が出そろった。総額は122兆4454億円と、25年度の要求総額から約4兆8千億円増え、3年連続で過去最大となった。多くの省庁で要求額の伸びが前年度を上回っており、26年度当初予算は25年度の115兆円を上回る可能性が出てきた。

 要求額が膨らんだのは、高齢化に伴う社会保障費や防衛費の増加などに加え、物価上昇を考慮し、要求基準が一部見直されたことが背景にある。これまでは重要政策の予算の上積みは前年度からの経費削減が求められたが、今回はこの制約をなくし、2割増の要求も可能となった。人件費などの義務的経費の基準も見直された。

 物価高に収束の兆しが見えないとはいえ、財政規律が緩んだ面は否めない。事業費が分からず具体的な金額を示さない「事項要求」も盛り込まれている。財務省は、財政健全化の取り組みが後退しないよう、各省庁との折衝で要求内容や金額を精査してほしい。

 気がかりなのは、借金に当たる国債の償還や利払いに充てる「国債費」の増加だ。過去最大の32兆3865億円となり、初めて30兆円を突破した。要求総額全体の26%を占めている。

 長期金利の上昇などが主要因だが、国民生活を支える予算の4分の1が、借金の返済に充てられている状況は危うい。既に国債残高は1100兆円を超えている。今後も金利の上昇は見込まれ、国債費はさらに膨れる可能性がある。

 25年度当初予算は、税収の伸びを受け、国債の新規発行額が28兆円台に抑えられた。今後も国債発行の抑制を堅持すべきだ。

 復興庁の要求総額は4514億円で、25年度当初予算比で350億円減となり、2年ぶりに減少した。道路整備を支援する交付金などが減少すると見込まれたことが影響している。一方、地域経済や農林水産業の活性化を目指す「産業・なりわいの再生」の分野は、25年度当初予算比で約2倍となる701億円を要求した。

 26年度は第3期復興・創生期間の初年度となる。原発事故に伴う除染で出た土壌などの県外最終処分、将来の避難指示解除を目指す「特定帰還居住区域」の除染や家屋解体などを着実に実行し、住民の帰還促進や地域再生を加速させなければならない。財務省は、被災地の意向を踏まえ、必要な予算を確保してもらいたい。

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