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【10月22日付社説】高市内閣発足/多様な意見を政策に生かせ

2025/10/22 08:15

 少数与党の状況は変わらない。政権内だけで物事を決するのではなく、国会で議論を尽くし、政策を実現させていくべきだ。

 高市早苗自民党総裁がきのう召集された臨時国会で、第104代首相に選ばれた。史上初の女性首相による内閣の発足と同時に、自民、日本維新の会による新たな連立政権が船出した。

 自民と維新は衆参両院で過半数に満たないものの、衆院の首相指名選挙では1回目の投票で237票を獲得した。無所属議員の一部などが投票したとみられる。

 それでも過半数をわずか4票上回っただけだ。議席数が野党と拮抗(きっこう)する中での政権運営は前任の石破茂政権と同様、極めて困難なかじ取りを強いられる。連立を解消したとはいえ、長年連れ添った公明党、基本政策が近い国民民主党などの協力を得なければ、政治を前に進めることはできない。

 高市氏と政治的な志向が重なる維新との連立政権に対し、保守色の強い政策への転換を危惧する声が上がっている。野党との丁寧な議論を通して、多様な意見を政治に反映させる努力を求めたい。

 多党化が進む中で、国会運営の在り方が問われている。野党も自らの政策を主張するだけでは、国民の負託に応えたことにはならないことを自覚してほしい。

 高市氏は閣僚人事で、総裁の座を争った小泉進次郎氏を防衛相、林芳正氏を総務相、茂木敏充氏を外相に起用し、初入閣組は10人に上るなど、挙党体制や刷新感をアピールした。党幹部人事で総裁選での高市氏の勝利に貢献した麻生派と旧茂木派からの起用が相次ぎ、「論功行賞」との批判が上がっていただけに、党内融和を最優先にしたのだろう。

 一方、連立を組んだ維新は閣外協力にとどめ、大臣の起用は見送られた。維新は自らの掲げる政策実現に向け、どのような形で政府や自民と具体的な政策協議を進めていくかは明確になっていない。連立合意に向けた協議では、唐突に衆院議員定数の1割削減が盛り込まれ、企業・団体献金の取り扱いは先送りされたが、その議論の過程は見えないままだ。

 公明との連立政権では、政府が国会提出前に法案や予算案を与党と調整する「事前審査」で、政策のすり合わせが行われてきたが、こうした不透明な手法での政策決定には批判も根強い。物価高対策や政治改革など喫緊の課題が山積する。政府、与党は、透明性の高い政策決定のプロセスを早急に確立するとともに、国会での審議を重視する姿勢に徹してほしい。

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