• X
  • facebook
  • line

【5月31日付社説】いわき信組の不正/金融機関の資格はあるのか

2025/05/31 08:05

 不正融資などの不祥事の実態は、前例をみないほど悪質といえる。金融機関として存続することすら疑問視される状況で、解体的な出直しが不可欠だ。

 いわき信用組合(いわき市)の不正融資などを受けて設置された第三者委員会が、調査結果を公表した。一連の不祥事は、多くの役職員が関与し、組織ぐるみで長期間にわたり行われ、隠蔽(いんぺい)されていたことを認定した。不正融資の額は昨年11月に同信組が10億円超と発表していたが、名義人に承諾を得ずに設置した口座を経由するなど複数の手口で、少なくとも247億円となる可能性も指摘した。

 同信組は地元密着の方針を掲げ、東日本大震災後には政府から約200億円の公的資金注入を受けていた。しかし、公平公正な経営に取り組むどころか、不正融資の過程では文書偽造などの刑事罰に問われかねない行為も行われていた。同信組が、地域の信頼を損なう背信行為を繰り返してきたことは許し難い。

 調査は不正融資に加え、元職員による横領やその隠蔽も対象としていた。その結果、横領した金額の処理を巡っても、本部の現金を流用するなどして穴埋めを実施していたことが明らかになった。不正融資にとどまらず、自分たちに都合の悪い事案について、不正な方法で対応する姿勢が常態化していたことが浮き彫りになった。

 第三者委は、不正を主導する立場にあった江尻次郎元会長ら旧経営陣の責任に加え、指示されれば職員らが不適正な手続きを実行してしまう組織風土を問題視している。金融庁などの機関は、不正を長年見落としていた反省を踏まえつつ、同信組が外部の人材を取り入れ、健全な運営体制を整えるまで厳しく監督する必要がある。

 同信組は、第三者委の聞き取りに対し虚偽の説明を繰り返した。関連するデータが残されたノートパソコンを破壊したり、当時の記録を処分したりしており、第三者委は不誠実な対応を「意図して全体像を隠そうとしていると疑わざるを得ない」と酷評する。不正融資に関連し、数億円の使途不明金が生じていることも判明した。

 一連の不祥事を受け、本多洋八理事長ら経営陣は責任を取って辞任し、大幅に刷新される見通しだが、このままの幕引きは許されない。使途不明金の存在の他にも、別の企業に対する不正融資が行われた可能性も指摘されている。同信組には、全てのうみを出し尽くすための内部調査を進め、預金者や地域に説明責任を果たすことが求められる。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line