5月に正式オープンした福島県富岡町のJR富岡駅東側に立地するワイン醸造所「とみおかワイナリー」は11日、自前の醸造所を使って初めての醸造作業を始めた。これまでは富岡産ブドウを使って別の醸造所でワインを仕込んできたため、ようやく念願の“富岡産ワイン”が完成する。
東京電力福島第1原発事故で全町避難中の2016年、同ワイナリーの遠藤秀文社長ら町民有志がブドウ栽培を始めた。東日本大震災による津波被害があった同駅東側に農地を広げ、震災前の町の人口と同じ1万6000本を植えた。この間、収穫したブドウを使い、川内村にある醸造所を借りて「とみおかワイン」を醸造してきた。
ワイナリーは津波で流失した遠藤社長の自宅跡に建設した。醸造設備のほか、ワインショップ、県産品を使うレストラン、軽食販売店がある。約9年半かけて富岡で栽培から醸造、販売までが可能となり、地域資源としてより注目され、にぎわいの波及が期待される。
震災と原発事故から14年6カ月を迎えた11日、遠藤社長や醸造担当の細川順一郎さんらが収穫したばかりのシャルドネなど約600キロを使って仕込み作業を進めた。来春、スパークリングワインとして販売される。
遠藤社長は「富岡にワイン醸造という新たな景色を生み出せた。皆さんへの感謝の気持ちを忘れず、より高品質なワインを造っていきたい」と意気込んだ。