兄弟が切り盛りする食堂は、兄が若い頃から抱いていた夢をかなえた場所だった。
2026年下期の開業に向け、整備が進む伊達市の大型商業施設イオンモール伊達の建設現場を右手に見ながら旧国道4号を北上すると、桑折町の工業団地の一角に「トラック屋台の町食堂 成田屋」が見えてくる。
コンテナを改装
オーナーの佐藤嘉信さん(63)は、運送会社で住宅用パネルの製造なども手がける大藤運輸商事の社長だ。会社の敷地にトラックのコンテナ部分を改装し、09年5月に食堂を開業した。「ほかの人と同じことをしたくなかった。車を改造することが好きなのもあった」と明かす。
20歳の頃から、福島市のレストランで働いた。中華部門で鍛えられ、「いつかは自分の飲食店を持ちたい」と考えていた。レストラン勤務の傍ら、車が好きだったこともあり、トラックのアルバイトをかけ持ちした。25歳の頃に一念発起し、トラック1台から自分の会社を起こした。
会社が順調に大きくなる中でも、飲食店を開業するという夢は持ち続けた。50歳を前に、念願の食堂を開店。弟宏征さん(61)と2人で調理場に立ち、福島市のレストランで名物だった酸辣湯麺(スーラータンメン)を看板メニューにした。
トラックのコンテナ部分を食堂にするという珍しさから、地元テレビ局の取材が殺到。近くにある聖光学院高の生徒もよく訪れた。「当時通っていた聖光学院OBが久しぶりに訪れてくれてうれしかった」と嘉信さんは笑顔を見せる。
しかし、11年3月に発生した東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響を受けることになる。仮設住宅建設に伴う建築資材関係の仕事が多忙を極めた。
しばらくは店舗をほかの人に任せたり休業したりしたが、紆余(うよ)曲折を経て昨年12月ごろに佐藤さん兄弟が店を再開。宏征さんも久しぶりに腕を振るうことになった。宏征さんは「ブランクはあったが、だんだん慣れてきた」と話す。
お薦めは豚バラ丼
再開に当たって、これまでのラーメンだけでなく、ご飯ものを増やすことにした。豚バラ丼やオムライスなどがお薦めという。
ただ、トラックのコンテナを改装した店舗のため、酷暑の中では調理場でフライパンを振る佐藤さん兄弟だけでなく、店内の客にも炒め物の熱気は厳しい。夏場のご飯ものは豚バラ丼のみにしている。その豚バラ丼は食感がやわらかく、味も濃いめでご飯が進む。
一方、夏場でもほとんどのメニューを提供するのが麺類だ。中でも、鶏中華はしょうゆと塩から味が選べる。鶏のチャーシューに、伊達鶏の鶏ガラを使ったスープと太麺のストレート麺が良く合う。
近隣の工場で働く人に加え、工事関係者や近隣住民なども訪れる。「イオンモール伊達が開業すれば、県内外から多くの人が訪れる。トラックのコンテナを改装した店を好んでくれる人も多く訪れてくれるだろう」。佐藤さんは新たな夢を思い描いている。
■住所 桑折町成田字元宿1の1
■電話 090・3981・0565
■営業時間 平日=午前11時~午後2時ごろ 土曜=午前11時~午後5時ごろ
■定休日 日曜日、祝日。臨時休業あり
■主なメニュー
▽鶏中華=700円
▽ラーメン(しょうゆ・塩)=700円
▽豚バラ丼(スープ付き)=850円
▽でか餃子=450円
▽酸辣湯麺(夏季は休み)=900円
自作キッチンカー
2018年にキッチンカーで屋台ラーメンを始め、イベント会場などで提供していた。その後、新型コロナウイルス禍でイベントがなくなったことから、伊達市保原町の魚店の駐車場を借り、昨年10月まで毎週土曜日に自作の2代目キッチンカーでラーメンを提供した。