郡山市と横浜市立大が2020年から進めてきた、同市ゆかりの作家久米正雄撮影の映像フィルムの修復作業が完了した。映像には「蒲団」などの作品で知られる作家田山花袋ら当時の文豪たちの様子が映っており、専門家は「大正期の作家らのプライベート空間を写した貴重な映像」としている。
修復したのは久米が大正末期~昭和初期に撮影し、「こおりやま文学の森資料館」に所蔵していたフィルム12本で、うち8本で映像が確認された。
芥川龍之介…記録も
中でも1924年4月に多摩川周辺で撮影されたフィルムには、初めて映像が確認された田山や、宇野浩二、里見トン(とん)、岡本一平(岡本太郎の父)ら10人以上の作家が和やかに交流する様子が映されている。また、詳細は不明だが芥川龍之介と菊池寛が座敷で過ごす映像も記録されていた。
11日、郡山市役所で成果報告会が行われ、市の担当者や専門家らがフィルムの概要を説明した。横浜市立大の庄司達也教授は「写真では確認できていた作家たちが映像として姿を現した。われわれが知らなかった文壇のつながりが分かる」と映像の意義を語った。
小沢純慶応志木高教諭は「びっくりするぐらい、いろいろな派閥の作家らが仲良く談笑している」と指摘。日大経済学部の山岸郁子教授も「文学史からだけでは読み取ることのできない作家たちの私的な空間、『作家らしさ』を映像に残そうという久米の態度がうかがえる」と述べた。
市は映像の公開や活用法について検討する方針。