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姿消す「まちの米屋さん」 福島県内…競争激化、「令和の米騒動」追い打ち

2025/11/25 07:10

店頭でコメの販売終了を知らせる張り紙。文面には感謝の言葉もつづられている=須賀川市

 コメの価格高騰が続く中、地域に親しまれている「まちの米屋」の廃業が全国で相次いでいる。福島県内でも今年、創業75年近い店がコメ販売をやめた。インターネット販売や大型スーパーとの競争に加え、「令和の米騒動」でコメの仕入れが難航したことが一因だ。「価格高騰が続く現状は、個人店にとって厳しい」。撤退を決めた店主はつぶやく。

 「令和の米不足により米の販売を辞めることになりました。七十余年に渡りありがとうございました」。須賀川市でコメを取り扱っていた商店の店先に、1枚の紙が張り出されている。「こんなことは今まで経験したことがなかった」。祖父から3代、75年近くコメ販売などを営み、今年に入ってコメの取り扱いをやめた男性店主(70)は話す。

 地域の事情に対応

  店は地元住民から「顔なじみの店」として地域に根付いてきた。時には支払いが難しい人に「ツケ払い」をしたり、外出ができない高齢者に配達をしたりしたことも。東日本大震災の際は救援物資が届く前に避難者にコメを提供するなど、地域や個人の事情に応じて柔軟に対応してきた。

 だが状況は変化する。市内の同業者が数年前に廃業し、自身も昨年夏ごろからコメの入荷が少なくなっていった。周辺のスーパーなどより5キロで1000円ほど安く販売していたが、販売価格を値上げすると、売れなくなる恐れがある。これ以上商売を続けていくのは難しいと考えるようになった。「潮時だったのかもしれない。今はどこでもコメを買える。米屋の役割は終わったのかな」。男性店主は時代の流れを受け止めた。

 コメ販売店の休廃業は全国で相次いでいる。帝国データバンクによると、全国で米穀類の卸売りや販売を手がける「米屋」の休廃業・解散は2024年度が88件。2年連続で増加し、過去5年で最多を更新した。

 価値を高める工夫

 まちの米屋の不振について、コメの流通に詳しい流通経済研究所(東京都)の折笠俊輔主席研究員はスーパーとの競争や安価商品を求める消費者のニーズの変化などに加え、昨今のコメ不足を要因に挙げる。折笠氏によると、コメ不足によって卸業者が大手を中心にコメを卸すようになったため、個人店までコメが流通せず、品薄状態になったのが一因という。

 一方で「最近はコメが余り始め、個人店でも一定量の調達は可能になってきている」と指摘。利用者の細かい注文にも対応が可能なまちの米屋が生き残っていくため、コメの質の良さを訴えたり、オリジナルのブレンド米を販売したりするなど「店の存在価値を高める工夫をしていく必要がある」と話す。

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