【復興財源の行方】「エフレイ」問われる主導力 成果波及まだ先

 
市町村座談会に先立ち浅野撚糸(ねんし)を視察する山崎理事長(左)=1月30日、双葉町

 ロボットが農作業や介護の現場で活躍し、水陸空を移動できる乗り物が行き交う―。福島国際研究教育機構(エフレイ)の山崎光悦理事長(72)は、東京都内で2月20日に開かれた国際セミナーで、最先端の科学技術で満ちあふれた浜通りの未来予想図を描いてみせた。

 エフレイはロボットや農林水産業、エネルギーなど5分野で研究開発を推進することで地域振興につなげる成果を生み出す使命や、関連産業の集積を主導する役目を担う。山崎理事長は先端産業が集まる米カリフォルニア州になぞらえ「浜通りを『常磐カリフォルニア』と呼ばせたい」と意気込んだ。

 7年間基盤固め

 昨年4月に設立されたエフレイはまだ本部研究施設がなく、研究代表者(ユニットリーダー)の公募を始めた段階だ。2029年度までの7年間を基盤固めと存在感の向上に重点を置く第1期と位置付ける。政府は7年間で計約1千億円の予算を確保する方針だが、研究成果の本格的な波及を目指す30年度以降の財源見通しは示していない。復興への貢献に加え「わが国の科学技術力と産業競争力の強化をけん引」するとの壮大な目標も掲げており、長期的に膨大な予算が必要となる見込みだ。

 世界の注目を集める成果を出すには「国内外の優秀な研究者の確保が不可欠」(政府関係者)となる。エフレイは29年度までに集める計画の研究者500人のうち、3割程度について海外で実績のある人材を呼び込みたい意向だ。ただ、ある野党国会議員は「米野球のメジャーリーガー級の報酬を用意しなければ、わざわざ海外から来ない」と指摘する。与党も国際競争に打ち勝てる給与や研究環境の充実を政府に働きかけている。

 エフレイには成果を地域へ波及させるため県や市町村、県内企業、各種団体との連携も求められる。浜通りを中心に15市町村を巡り、1月まで開いた市町村座談会は企業の視察も兼ね、地元の要望を把握する取り組みの一環だ。理事の一人は「(地元から)活動が目に見えにくいとの声もよくいただく。これから活動が活発化する中で『見える化』していく」と前を向く。

 水素も起爆剤に

 エフレイが立地する浪江町。20年3月に開所した「福島水素エネルギー研究フィールド」は次世代エネルギーと期待される水素の世界有数の製造拠点だ。一方、町内の広範囲に帰還困難区域が残り、重い課題が横たわる。吉田栄光町長は帰還困難区域の再生に国費が投じられていることを踏まえ「復興事業には一定の国民の理解が必要になる」と受け止める。だからこそ第2期復興・創生期間(21~25年度)に全力で事業に取り組み「国民に復興した姿を見ていただきたいという思いが強い」と語る。

 研究フィールドで生産される水素の商用化は「第2期後」の26年度が目標だ。吉田町長は先を見据え、表情を引き締める。「水素の利活用はエネルギー政策に位置付けられている。継続した事業展開を国や県に訴え続ける」。福島発で動き出した技術革新への挑戦を軌道に乗せられるか。予算を投入する政府の本気度が試される。