「神童」がリング上で土下座をした。キックボクサーでの栄光にこだわらず、プロボクシングに飛び込んでわずか2年半。那須川天心は「時代の一つの分かれ道ぐらいの気持ちで闘う」と臨んだWBCバンタム級王座決定戦で24日、3―0の判定で完敗。言動でも話題を呼ぶ異端児は、世界王座の遠さをかみしめた。
1回に左の大振りを当てて、井上拓真をぐらつかせる。2回も変幻自在のフェイントなどで勢いに乗ったとみられた。ただ徐々に間合いを詰められて右を被弾。足が止まり、自慢のパンチスピードも鈍った。
真っ向からの打ち合いで、ファンを楽しませる普段のパフォーマンスをする余裕はない。相手を押すような行為に、ブーイングも浴びた。類いまれな格闘技センスを大勝負で輝かせることはできなかった。
怖いもの知らずのイメージが強いサウスポー。一方で「負けるかもしれないというのは常にある。人生でずっと勝っている人はいない。負ける気は全くないけど、そういう感情とも闘っていければなと思う」。敗北を知り、尊敬の念を込めるように、新王者と握手を交わした。
