テレビや雑誌が情報発信のメインストリームだった平成時代、「カワイイ」の概念をリードしたのは「安室ちゃん」や「あゆ」、「エビちゃん・もえちゃん」といった圧倒的なカリスマたちだった。SNSの普及で多様な価値観が尊重されるとともにロールモデルが不在となった現代、女性たちは何を指標に「カワイイ」を目指しているのか。新ブランド・『キュルアム』の開発にあたって「KAWAIIプロジェクト」を立ち上げたコスメメーカーに、現代の「カワイイ」の定義とそれを具現化する商品開発について聞いた。
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■ルッキズムに結び付かない令和の“かわいい”の価値観「かわいいは見た目ではなくマインド」
ベストコスメ受賞のアイテムを数多く送り出すコスメメーカー・BCLカンパニーの若手社員、塚田莉奈さんと安東初音さんは「カワイイは見た目ではなくマインド」だと現代の20代の感性を語る。
「見た目のカワイイの感覚は人それぞれですから、正解は1つには絞れません。むしろ『自分が一番カワイイと思う自分が最高』といった自己肯定感や、『みんな違って、みんなかわいい』というポジティブマインドこそが『真のカワイイ』だという共通認識が私たちの世代にはあるような気がします」(安東さん)
安東さんはモード系、塚田さんはフェミニン系とファッションやメイクの系統は異なるものの、互いを「カワイイ」とふとした時に褒め合うという。2人と同世代のアイドルグループ・FRUITS ZIPPERが「NEW KAWAII」で歌っている「大事な人を褒め合いましょう」「さあ、かわいいも言い合いましょう」というマインドそのものだ。
「安東さんと私のカワイイの指標は真逆と言っていいほど違いますが、共通しているのは『自分モテ』を大切にしているところ。『誰かが決めたカワイイよりも、自分軸のカワイイが一番』という感覚が共感できるから、お互いのことを『カワイイ』と認め合えるのかなと思います」(塚田さん)
「カワイイ」という言葉の定義は、「誰かが決めたもの」ではなく、「自分らしくあること」「似合っていること」「お互いを認め合うこと」と、その範囲や尺度は想像以上に広がっているのが“現代の価値観”といえる。世間一般ではなく、自分自身が主体的に決めるもの。そんな新たな「カワイイの価値観」は、確実に若い世代の間でスタンダードになりつつあるようだ。
■画一的なロールモデルがいない現代「メイクは自分の最大値を引き出すものに変化」
画一的なカワイイの指標がなくなった今、同社では、現代の「カワイイ」と徹底的に向き合うために「KAWAIIプロジェクト」を組織。メンバーには前出の安東さん、塚田さんに加え、数多くのヒットコスメを手掛けてきた中堅社員の大小原碧里さん、小川麻衣さんをはじめ幅広い世代が参加した。
その成果として新コスメブランド『キュルアム』を開発。第一弾プロダクトとして9色のリキッドアイライナーが発売された。黒か茶色が定番のアイライナーでこれだけのカラーバリエーションを展開するのは異例のことで、「パーソナルカラーの概念がこれだけ広く定着しているのだから、アイライナーにも選択肢がほしい」「本当に自分にぴったりなカラーを見つけてもらいたい」といったターゲット世代のリアルな感覚が採用されたという。
「従来、新商品を投入する際には売り場を確保するため、色はなるべく絞るのがセオリーでした。しかしそうした固定概念に縛られていると、『カワイイ』からはどんどん遠ざかってしまうのも事実です。すべての判断基準を若手社員の『カワイイ』に置き、迷ったら『カワイイ』方を選ぶ。それを具現化するために私たち先輩社員の知見やノウハウを駆使するというのが、キュルアムの商品開発チームの行動指針となりました」(小川さん)
9色はいずれも「ミルク1滴を加えたようなまろみカラー」と表現されたふんわり淡いカラーで、現代のアイメイクのトレンドとなっている目元に溶け込むような仕上がりが作りやすい色味が揃えられており、定番の黒や茶色はラインナップに入っていない。
「平成のアイメイクはアイラインを目頭から目尻までがっつり引いたり、重ね塗りしたりして、いかに目を大きく見せるかにフォーカスされていました。『皆が目指すカリスマ』に目が大きい方が多かったり、『目が大きい=カワイイ』という価値観が根強かったことも影響していたと思います。今はそうしたわかりやすいロールモデルがいない分、メイクは『誰かを目指すのではなく、自分の最大値を引き出す』ためにするものという考え方が主流になっています」(塚田さん)
■提案ではなく、消費者に寄り添うコスメ作り、「“かわいい”を押し付けない価値観」を大切に
キュルアムのアイライナーのキャップにはハート型の穴が空いており、チャームを付けられる仕様になっている。初回限定で4種のオリジナルチャームが付き、好みでカスタマイズできるのも今の世代の価値観が反映された「カワイイ」だった。
チームをまとめあげた大小原さんは「当初、『メイクをするときにチャームが揺れるのは邪魔なのでは?』と感じていました」と率直な意見を話してくれた。
「先輩社員の私たちは、『邪魔になるものは付けない』というユーザーの利便性を先に考えてしまっていました。しかし、『かわいいコスメを持っているとメイクをする時の気分も上がる』という後輩たちの主張に、なるほどと思ったんです。コスメを見て"きゅるん"と胸が高鳴る感覚、チャームがポーチからはみ出ているのがカワイイという魅せ方もあるという気づきがありました。平成の頃はメディアが発信するトレンドや、メーカーが提案する商品が消費者に影響を与えていました。しかし、これだけ『カワイイ』の文脈が多様化している今、これまで以上に消費者のインサイトを丁寧に紐解く必要性を感じています」(大小原さん)
そんなカワイイを追求してきたキュルアムが大切にしているのは「カワイイを押し付けない」価値観だという。
「私自身、1消費者として『かわいいものを作りました。ほら、かわいいでしょ!』という主張が強すぎる商品は少し引いてしまいます。もちろん最高にかわいいものができたという自信はありますが、お客さまに対しては『あなたのかわいいのお役に立てたらいいなと思っています。どうですか?』くらいの気持ちでいたい。それを手に取っていただいた方から『かわいいね』という反応が返ってきて、初めてカワイイが成立する。そんな双方向のコミュニケーションがお客さまと生まれるブランドにでありたいと思っています」(安東さん)
改めて、FRUITS ZIPPER「NEW KAWAII」の「大好きな人がにゅーかわいかった それがほんの少しでも わたしのせいならいいな」という歌詞を引用したい。相互にポジティブな影響を与え合うことで、メディアやメーカー、社会など誰かが決めたルッキズムを解き放ち、自己肯定も他者肯定も叶えられる最強のツール。そんな「令和のカワイイ」の価値観が『NEW KAWAII』の歌詞、そしてキュルアムのものづくりから見えてきた。
(取材・文/児玉澄子)
細分化されていく「カワイイ」の価値観…ルッキズムとの上手な “向き合い方”
2025/10/30 09:00
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