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【子育て応援隊】内堀知事に聞きました「少子化と人口減対策」 若い世代集まる福島へ

2024/12/16 10:33

少子化と人口減少への対策について語る内堀知事(左)。右は大橋アナウンサー

 子どもたちが進んでいく未来の福島県は、どんな姿なのでしょうか。前回に続き、内堀雅雄知事に少子化と人口減少についての課題と対策についてお話を聞きました。聞き手はふくしま子育て応援隊ナビゲーターで福島中央テレビアナウンサーの大橋聡子さんです。

 ■急速な少子化に強い危機感ある

  県内は人口減少が進み、出生率低下も課題です。この要因についてどう考えていますか。

  本県の合計特殊出生率は昨年は1・21となり、全国平均と同じ水準にまで低下しました。出生数は昨年は9019人と、この20年間で約半数に減少しています。とりわけ本県は全国の中でも少子化が急速に進行していて、私も非常に強い危機感を持って受け止めています。

 要因はさまざまですが、私は婚姻件数の減少と女性の数の減少という二つの要因の影響が大きいと考えています。若者が経済的な不安や負担感などから、将来の結婚や子育てを前向きに捉えることが難しくなっていることや、出会いの機会そのものが減少していることが、未婚化晩婚化という傾向をさらに強めていると考えています。

 女性の数の減少については、本県では大学進学や就職時に首都圏へ流出する傾向が強いため、若い世代の男女比がバランスを変えてしまい、一層出会いの機会が少なくなっていると考えています。

 県では出会いから結婚、妊娠、出産、子育てまでの切れ目のない支援を行うとともに、若者や女性に福島で働く魅力を積極的に発信するなど、選ばれる地域づくりにも力を入れていきます。

 ■県内で就職する選択肢を増やす

  人口減少は県外に流出しているというのも背景にあるかと思います。若者たちがなぜ故郷から出て行くと思いますか。

  本年度、本県出身で首都圏に住んでいる若年層にアンケート調査を行った結果、多くの若者が進学を機に福島県を離れています。進学を希望する学校が県内にないことが大きな要因になっていました。さらに、県内での就職転職を検討したことがない人が5割を超えていました。

 夢を実現するために若者が故郷を離れるという選択肢があってもいいと思います。一方で県内には国内外で高く評価されている企業や事業所も多く、県内で働くことも選択肢の一つになるということを、ぜひ心においてほしいと思っています。県では昨年度から「感働!ふくしま」プロジェクトを開始し、企業や教育関係の皆さんと一緒に県内の魅力的な企業や、そこで働く方々の姿を若者に伝える取り組みを進めています。

 県内企業を対象に女性の採用活動や職場の女性活躍などに関する調査も実施し、女性の採用に消極的な企業が4割近く存在することが明らかになりました。このため、人口減少・危機対策セミナーを開き、人口減少対策として若者や女性の雇用対策がとても重要であるということを企業等の皆さんと共有しました。

 若手人材の確保に苦労している県内企業を支援するため採用力アップセミナーも開き、私も参加して、若者が自己実現のためにスキルアップを希望していることなどの気付きがありました。これらの気付きを共有し、企業側の意識改革を促すなど、若者にとって働きがいのある職場づくりを推進することが重要です。

 ■柔軟な働き方ができる環境重要

  少子化・人口減少の改善に向けて「若い女性の雇用促進」「子育てがしやすい環境づくり」が大切と思いますが、知事はどう考えますか。

  明確な解決策が見つかりにくい、困難な課題です。県としては、国はもちろん、市町村や企業などと連携をしながら総合的な施策を推進しています。

 若い女性の雇用促進と子育てがしやすい環境づくりは、人口減少に歯止めをかけていくために特に重要な視点です。雇用促進については、出産・育児期も男女が共に働き続けられるような柔軟な働き方ができる職場環境の整備が重要です。そのため、経営者の意識改革を促す機会を積極的に提供するとともに、育児や介護休業の取得促進等に取り組む企業に奨励金を支給するなど、仕事との両立を支援しています。

 職場などでの性別による無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)の解消も重要で、さまざまな機会を通じて発信していきます。

 社会全体で応援する

 子育てしやすい環境づくりについては、子どもを中心に全ての県民が幸福を実感できる「こどもまんなか社会」を目指すことが重要です。現在策定中で、来年度から始まる「県こどもまんなかプラン」に基づき、ライフステージに応じた施策を切れ目なく展開し、親が喜びを感じて子育てできるように社会全体で子育てを応援する機運を高め、福島で子育てをしてよかったと思えるような環境づくりを進めていきます。

 ■結婚出産の希望、実現をサポート

  少子化と人口減少という課題に対する、県の取り組み状況を教えてください。

  急速な人口減少のスピードをいかに緩やかにするか。危機感を常に持ち、出生数の増加を目指す自然増対策と、若者等の県内定着の促進や移住定住の拡大に向けた社会増対策、この二つを車の両輪として、総合的に推進していきます。

 自然増対策では婚姻数の増加に向けた取り組みが重要です。県は結婚に対する個人のさまざまな考えを尊重した上で、希望をかなえられるよう若者の出会いの機会を創出する取り組みに力を入れていきます。

 出産・子育ての希望をかなえる環境づくりとして、不妊治療への支援や、いわゆるプレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)の普及・啓発に取り組みます。保育ニーズに応じた支援も充実させていきます。

 雇用の受け皿を拡大

 社会増に向けた取り組みでは、「感働!ふくしま」のプロジェクトに加え、地元への就職やUIJターン、受け皿となる企業を増やすため、県内中小企業等の株式上場に対する支援や、東京圏の大学生が福島で就職活動を行う際の交通費補助などにも力を入れています。私自身が、起業した女性や製造業の現場で活躍中の女性、福島に移住した若い方々とお会いし、ご意見も伺っています。

 これらを通し、国や市町村、企業や関係団体の皆さんと連携しながら少子化、人口減少という困難な課題にチャレンジしていきます。

 ■知られていない魅力を広く発信

  若い世代に福島を魅力的に思ってもらうために知事から若い世代、そして子どもたちへのメッセージをお願いします。

  福島には、子どもの医療費が無料で安心して子育てができる環境や、県内外で高く評価されている企業、働きがいのある仕事、復興や地域活性化に向けての困難な課題に挑戦している方々など、魅力や宝物がたくさんあります。残念ながらそうした魅力が、若い世代の皆さんに十分に知られていないのが現状です。

 県としてもさまざまな機会を通じて福島の魅力を発信していきます。若い世代の皆さん一人一人が自分らしく生き、豊かさや幸福を実感できる福島の未来を皆さんと共に築いていきたいと考えています。

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