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【1月18日付社説】ガザの停戦合意/後戻りを許してはならない

2025/01/18 07:52

 戦火が絶えない状況への後戻りは許されない。国際社会の英知が問われるのはこれからだ。

 イスラエルとイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザの停戦に合意した。あすから6週間、戦闘を休止する。

 2023年10月の戦闘開始以来、ガザ側の死者は4万6千人を超えている。戦闘が続けば、さらに犠牲が増えることは避けられなかった。停戦は人命尊重と国際社会の安定に向けた一歩であり、その意義は極めて大きい。

 仲介国のカタールと米国によると、6週間は停戦の第1段階と位置付けられ、ハマスは高齢者や負傷者を解放、イスラエルも拘束するパレスチナ人数百人を釈放し、人口密集地から撤収する。ガザへの人道支援の拡大や、住民の帰還などが期待される。それ以降の停戦継続についても協議する。

 今後の焦点は、合意が守られるかどうかだ。イスラエルは合意後もガザへの攻撃を続け、多数の犠牲者が出ている。停戦の期日前とはいえ、合意発表後の攻撃は停戦の実現を疑わせ、ガザへの人道支援を妨げる恐れがある。

 国連をはじめとする国際社会は、両勢力に対し、合意の順守と恒久停戦の実現を継続して働きかけることで、ガザの人々の救済につなげなければならない。

 合意の背景には、トランプ次期米大統領が就任前の停戦を望み、双方に圧力をかけたことがある。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、自国への支援を明確にしているトランプ氏との関係を保つ必要があった。ハマス側は指導者が相次いで殺害されるなどして、抗戦を続けるのが難しい状況にある。トランプ氏が大統領に就任し、さらに情勢が不透明となる前に停戦にこぎ着けたいとの狙いがあったとみるべきだろう。

 ネタニヤフ氏を巡っては、戦闘を再燃させる懸念が拭えない。政権内の極右勢力は停戦に反対しており、権力基盤は盤石ではない。求心力を保つためには、ハマスに対して強硬姿勢を取り続ける必要があるとみられている。停戦が実現すれば、戦闘の発端となったハマスのテロ行為を防ぐことができなかった責任を追及されるとの指摘もある。

 イスラエルが国際社会の非難を浴びながらも、戦闘を継続してきたのは、米国がそれを擁護してきたからにほかならない。停戦の継続には米国がイスラエルの行動を抑制できるかが鍵となる。日本を含めた各国は、米次期政権に対して責任ある対応を求めていかなければならない。

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