華やかな演奏スタイルと独特のキャラクターで聴く人々を自分の世界へといざなう―。五条院凌(ごじょういんりょう)さんは交流サイト(SNS)での活動やメディアへの出演で注目を集めるピアニストだ。2月23日に県内で初めて、福島市のふくしん夢の音楽堂でコンサートを開いた五条院さんに、本県の印象やピアノとの出合いを聞いた。
初の演奏会には黒髪と黒を基調としたシックな衣装で登場。マイクを通さない生音を聴かせる形で行い、情熱的な演奏を披露した。合間には「お美しいお福島の皆さま、ご機嫌麗しゅう」と、五条院さんの代名詞でもある「お」を付けたトークで会場を沸かせた。
演奏会後、本紙のインタビューに応じ「皆さまに来ていただき、おバイブスが伝わってきた。お福島は地元のお青森県とも近い空気感で、自由に羽を伸ばして楽しく演奏できた」と印象を語った。大きなパイプオルガンが自慢の音楽堂大ホールについては「音の響きの無限に広がる感覚が気持ちよく、こういったホールは都内にもなかなかない」とたたえた。
ピアノの音色を集中して聴ける今回のような「生音コンサート」のほか、映像演出などを取り入れたエンタメ要素の強いコンサートも併せて開いている。そこでは自身のピアノとデスクトップミュージック(DTM)が主の「PIANO BEAT MUSIC」の楽曲を使用して「生音コンサート」とは違った演奏が見られる。
現在のスタイルを確立するに至り、どう音楽と向き合ってきたのか。幼少期にピアノとクラシックバレエを始めた五条院さん。「母の趣味だったピアノが生活の一部になり、人生の一部になった」と話す。クラシックバレエで培った優雅な立ち振る舞いは、現在の演奏スタイルの基にもなっており、日々フィジカル面の強化も欠かしていない。
負けず嫌いな性格で「覚醒前の人格の音大生時代は、周りに負けたくない一心でひたすら練習をしていた」と語る。現在は技術の向上だけでなく「旅に出て世界を見たり、基盤となる体を鍛えたりと、表現のための感性と身体を磨くことにも時間を使っている」と明かした。
クラシック以外に作曲も行う五条院さんの曲には、古里への視線も垣間見える。昨年発表した「明日はお晴れ」は、古里津軽の冬の太陽の神聖さをピアノの音色で描き出している。「幼少期から冬はほとんど晴れない雪国のつらさを感じていた。その分晴れの日は本当にハッピーな気持ちになる。その太陽の神聖さを曲にしています」と、込めた思いを語る。
今後の目標については「『ベルサイユのばら』のおオスカルさまから多くのことを教えられたので、フランス・おベルサイユ宮殿でのお生コンサートを目標にしている。そこで新たな五条院が生まれるのでは」と「おビッグな目標」を掲げた。
このほかにもクラシックバレエとコラボしたコンサートや、民族楽器とのアンサンブル、小さい子どもが一緒に手拍子などをして参加できる演奏会など、今後実現したいコンサートのアイデアを笑顔で話した。