三春町出身の登山家で、エベレストに女性として初めて登頂した故田部井淳子さんをモデルにした映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」で、主人公の女性登山家の青年期を演じる俳優のんさん。東京都内で１３日に行われた映画の完成報告会では、「大役で巨大なプレッシャーがあったが、そのおかげで演技に気合が入った」と話し、充足感をにじませた。
のんさんの出演は、報告会で発表された。吉永小百合さんが演じる主人公の青年期を務めるのんさんは、雪山での過酷な撮影も経験した。撮影現場は待機中のバスの中に霜が降りてくるほどの寒さだったといい、凍傷を防ぐために屋外では常に手足を動かし続けるようアドバイスされたことなどのエピソードも披露。「雪山の洗礼を受けました」と苦労の中で行われた撮影を振り返った。
撮影前には、田部井さんの人物像を研究したり吉永さんの過去の出演映画を視聴したりして主人公の役のイメージをつくっていった。
その中で「吉永さんの演技を見ているうちに、瞳の力に魅了された」といい、今作品では吉永さんの「瞳の力を少しでも表現できないかと努力した」と、役作りで工夫した点を明かす。「撮影の間、目が疲れないようにスマホのゲームをやめたり、できるだけ画面を見る時間を減らした」と語り、場を和ませる一幕もあった。
吉永さんとは、東日本大震災の復興支援のために行われた、東北ユースオーケストラの公演で一緒に朗読を行った経験がある。のんさんについて吉永さんは「自分の娘にこんな子がいたらいいなと思う。朗読でご一緒した縁もあったので、今回共演できて本当に良かった」と話した。
主演・吉永小百合さん「俳優として８合目」
「田部井さんがてっぺんの向こうから『よくやったね』と言ってくださっている気がする」と完成報告会で語った主人公役の吉永小百合さん。「俳優としてのキャリアを山登りに例えると何合目か」という質問に、吉永さんは「８合目くらい。頂上まで行けるかは分からないが、田部井さんのように一歩ずつ歩いていきたい」と答えた。
同じ質問に、主人公を支える夫役の佐藤浩市さんは「７合目まで来て、ちょっと引き返そうかなという感じ」と冗談めかして答え、親友役を演じた天海祐希さんは「ずっと５合目です」とストイックな一面を見せた。
阪本順治監督は「人の一生を２時間の映画にするというのは本当に難しい。それでも田部井さんのご家族から『託します』と言っていただけたことが心の支えになっていた」と制作時を振り返り、「いろいろな世代の方に、必ず元気になってもらえる。そういう映画です」と、作品に込めた思いを語った。
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映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」は１０月３１日公開。県内では郡山テアトル（郡山市）などで上映される。
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