生活環境変化、健康に影響

 

 今回の原発事故による放射線被ばく量とその健康影響について、今年3月に国連の委員会(UNSCEAR)から、最新の報告書が発表されました。甲状腺がんを含め、放射線被ばくに伴ったがん増加の可能性は低いと報告されています。その一方、精神的な影響や生活環境が変わることによる健康への影響は甚大でした。

 糖尿病、高血圧、高脂血症(コレステロールが高い)、肥満といった生活習慣病や精神的な影響など、原発事故当初は課題であったが、その後改善したものもあれば、10年たった現在でも課題なものもあります。ただ、そのような一つ一つの病名だけが、健康への影響ではありません。

 健康への影響の中で重要なものの一つが、病院や医療へのアクセスの悪化でした。例えば、避難を経験したいくつかの地域では、大腸がんなどの大切ながん検診への受診率が下がったことが知られています。

 がん検診は、定期的に受診することで早期に病気を発見し、治療することを目指すものです。元々、地域によっては、受診率が低いことが問題であるがん検診もありますが、そこからさらに受診が減ってしまえば、その分、病気が見つかるのが遅れてしまいます。

 少し間接的ですが、このようなことも原発事故に伴う健康への影響の一つです。そしてこれは、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう現在も同様に課題となっています。