トリチウムは今回の原発事故によって周辺にばらまかれてしまった人工の放射性物質であると同時に、自然界で作られる天然の放射性物質です。大気中の窒素や酸素が宇宙から降り注ぐ放射線と反応することにより、世界中で年間約7京ベクレル(70000兆ベクレル)ほど常に作られ、それらが地表に降り注いでいます。
そのトリチウムを測ることで、地下水がいつからそこにたまっているのか(滞留時間)を知ることができます。大気中のトリチウムが雨で降り注ぎ、地下に浸透していきます。地下に浸透した水の中ではトリチウムは増えないため、トリチウム濃度は半減期(約12年)にしたがって減っていきます。その減り具合を見ることで、いつからその地下水がそこにたまっているのかを計算できるのです。
セシウムなどと同じく、大気中での核実験の影響により1960年代前半をピークとして雨の中のトリチウム濃度は現在よりも高く、雨と地下水を比べて地中の水の動きを調べたり、年代を推定したりする研究が多く行われていました。