今回の原発事故による放射線被ばく量とその健康影響について、今年3月に国連の委員会(UNSCEAR)から「2020年レポート」として、最新の報告書が発表されました。
これまで数回にわたってご紹介してきたように、今回の報告書では、セシウムによる内部被ばくに加え、甲状腺の被ばく量も、前回の2013年版報告書に比べて大きく下方(より小さい値)に修正され、甲状腺がんを含めて放射線被ばくに伴ったがんの増加の可能性は低いと報告されています。
放射線による遺伝的な影響についても、チェルノブイリ事故後の結果でも明らかではなく、今回の事故後において、遺伝的な影響を危惧する状況にはありません。
その一方で、精神的な影響や生活環境が変わることによる健康への影響は甚大でした。事故後継続的に行われている県民健康調査では、被災者の方々の精神的な状況についてお伺いしています。事故当初、非常に悪化していた精神的な影響は、年を追うごとに状況は改善し、震災当時に比べればかなり良くなりました。その一方で、依然として全国平均に比べれば、やや悪い状況も続いています。