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12市町村、確かに進む復興の歩み 帰還困難区域では避難指示継続

09/11 15:15

 2011(平成23)年3月11日の東京電力福島第1原発事故により、政府は県内の12市町村に避難指示などを出した。事故から10年6カ月となり、帰還困難区域ではまだ避難指示が継続されているものの、各市町村は着実に復興の歩みを進めてきた。21年の「3.11」以降の各市町村の主な取り組みを紹介する。

 小高区4小学校再編

 【南相馬】4月には震災記憶伝承の場として、原町区北泉地区に「メモリアルパーク」が開所した。津波の高さを示すモニュメントや震災犠牲者の名前が刻まれた記銘碑が設置されている。
 小高区では、原発事故の影響も受けた少子化により4小学校を再編し、新たな「小高小」が開校した。市は小高区役所に「おだかぐらし担当」という新たな組織を設け、移住定住の動きが進むよう取り組んでいる。

 五十人山の除染完了

 【田村・都路】都路地区と葛尾村をまたぐ五十人山で除染作業が終了し、5月に安全祈願祭が開かれた。新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、山開きイベントは中止となったが、登山客が震災以来となった散策を楽しんでいる。
 地区では今後、稲作のさらなる振興に向けたライスセンター整備やグリーンパーク都路でフライングディスク競技を行うための芝生化事業などが進められる。

 生活環境の改善進む

 【大熊】2019年4月に避難指示が解除された大川原地区では、役場新庁舎や住宅などが立ち並び、町復興の足掛かりとして整備が進む。かつての中心市街地だった下野上地区などは、来春の避難指示解除を控える。
 大川原には4月に商業施設が開所し、住民の買い物環境が改善した。10月には隣接する形で交流施設、宿泊温浴施設が完成する予定で、住民生活を支える総合施設が全面オープンする。

 年明けにも準備宿泊

 【双葉】早ければ来年1月から、住民帰還に向けた避難指示解除を判断するための準備宿泊を始める。対象地域は、帰還困難区域のうち、人が再び住めるように整備する特定復興再生拠点区域(復興拠点)の555ヘクタール。
 町は円滑な準備宿泊を進めるため約300世帯を対象に意向を調査している。これらの結果を踏まえながら、来年春ごろの避難指示解除に向けた効率的なインフラ整備を進める考えだ。

 「水素」産業集積図る

 【浪江】2017(平成29)年3月に避難指示が一部で解除された町では昨年、世界最大級の水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド」が開所。町は「水素」を復興の鍵として、関連産業の集積を図る。
 拠点で製造された水素は今夏、東京五輪聖火の燃料として使われた。このほか3月には町復興のシンボル「道の駅なみえ」が全面オープンし、相双地方の観光復興の拠点となっている。

 移住促進へ積極支援

 【楢葉】本年度から、10年間のまちづくり施策の最上位計画「第6次町勢振興計画」がスタートした。移住政策を重視しており、年間80人以上を呼び込む目標を掲げる。移住しやすい環境を整えるため、住宅取得の支援や安価な賃貸住宅の提供などを積極的に進める。
 県道広野小高線(通称・浜街道)の沿線に広がる美しい景観を生かしたサイクリングコースを設定し、観光の魅力向上にも取り組む。

 震災記録施設が開館

 【富岡】役場近くに町独自の震災記録施設「とみおかアーカイブ・ミュージアム」が7月、開館した。震災と原発事故で一時全町避難した町の災害の記憶と教訓を発信する拠点で、町は「交流人口の拡大につなげたい」としている。
 帰還困難区域を巡っては、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が23年春に解除される。町は復興拠点の将来像を模索しながら、準備を進めている。

 選手の育成拠点戻る

 【広野】サッカー選手を育成するJFAアカデミー福島の男子が4月、震災と原発事故から10年ぶりに町内に拠点を戻して活動を再開した。
 本県出身の4人を含む中学1年生19人が、広野中に通学しながら技術を磨いている。住民からは「震災前の町の姿にまた一歩近づいた」と歓迎の声が上がる。町も「親元を離れて生活する選手たちを住民と連携し支える」と、広野での成長を温かく見守っている。

 コメ作付け年々拡大

 【川俣・山木屋】地区内に穀類乾燥調製施設「ライスセンター」の建設が進んでいる。本年度中の完成を予定し、2022年産米の収穫に合わせて稼働を開始する。
 町によると、17年3月末の避難指示解除後、19年度の作付面積は25ヘクタール、20年度は32ヘクタールと年々拡大している。施設は、作付面積約60ヘクタール分のコメの乾燥調製に対応することが可能で、施設の整備を通じて一層の農業振興につなげる計画だ。

 野行地区で試験栽培

 【葛尾】村唯一の帰還困難区域となっている野行地区は来春、地区内の復興拠点で避難指示が解除される。
 同地区では、地元有志の手で営農再開に向けたコメと野菜の試験栽培が今年始まった。10月ごろに収穫し、放射性物質検査を行い安全性を確認する。
 村は秋に独自の除染検証委員会を設立し、環境省による除染効果を確かめ、帰還する村民が安全に生活できるかを調べる。

 除染土の再利用発信

 【飯舘】帰還困難区域の長泥地区で7月から、地区内で行われている除染土の再利用現場の一般向け見学会が始まった。環境省の職員が農作物の実証栽培の現状を解説しながら、地区再生の歩みを伝えている。
 原発事故によって生じた除染土の再生利用や減容化は、県内外で理解が進まないのが現状だ。見学会の開催には、再生利用の安全性を周知することで理解を深めてもらう狙いもある。

 村活性化鍵はワイン

 【川内】6月に、村が村内のブドウ畑に整備していた「かわうちワイナリー」が開所した。震災と原発事故で被害を受けた農業再生、そして新たな産業を生み出す拠点として期待されている。
 開所により、ブドウの収穫から醸造までの全工程を村内で完結できる体制が整った。村は特産品を使ったワインに合う料理の開発やブドウ畑の景観を生かしたイベントなどを開催し、交流人口の拡大を目指す。

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