廃炉作業が進められている原発周囲の敷地内タンクには、放射性の水素である「トリチウム」が保管されています。トリチウムは最も軽い元素である水素の仲間です。
トリチウムは放射性物質なので、放射線を出しますが、そのエネルギーは紙一枚で遮ることができるくらい小さいです。そのため、トリチウムによる身体への影響は、概して小さいことをお伝えしてきました。
その逆に、トリチウムが出す放射線のエネルギーが小さいことは、トリチウムを計測する際のハードルとなってしまっています。
簡単に説明すると、トリチウムから出る放射線のエネルギーが小さ過ぎるため、トリチウムが含まれているかもしれない物体から、トリチウムの放射線(ベータ線)が外に飛び出てこず、横に測定器を置いても分かりません。
実際には、水として存在しているトリチウムなら、まずは水に含まれているかもしれない、ほかの放射性物質や不純物を取り除くため、蒸留をします。さらに、その蒸留水にトリチウムからの放射線(ベータ線)が当たると光る薬品を加えて、一昼夜置いておき、その後その光り具合を計測するという順番になります。
このようにさまざまな処理を行わないと、トリチウムの計測ができません。これまでのセシウムのように、食品をミキサーにかけて入れ物に詰めて、数分計測するといった簡便な計測ができないのが実情です。