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【9月12日付社説】侵略的植物/防除と監視体制の確立急げ

09/12 08:00

 特定外来生物に指定されている植物が農業や河川の治水管理などに及ぼす脅威を認識し、備えを強化することが肝要だ。

 南米原産の多年草で、繁殖力の強さから史上最悪の侵略的植物といわれる特定外来生物「ナガエツルノゲイトウ」が、いわき市の一部地域の水田などで確認された。東北での確認は初めてだ。

 田畑に入り込むと、最悪の場合は収穫不能の壊滅的な被害を受ける。河川や水路で繁茂すると、農業用水の取排水の障害や治水用の排水ポンプが詰まる原因になる。茎や根の断片から再生する特性があるため、刈り払うと水路などを通じて生息域が拡大する。

 ナガエツルノゲイトウは関東以西で既に定着している。県や市、農業団体、同じ水系の生産者などは、他県の初期対応の成功事例などを参考にして的確な防除や継続的な監視を行い、他地域への拡散を食い止めることが重要だ。

 県病害虫防除所は先月、防除対策を呼びかける特殊報を出した。草としては国内で初めてだ。

 病害虫の場合は、職員による田畑の巡回調査や生産者らからの情報を基に警報などを出す。しかし植物は法整備の遅れが影響し、外来の草に精通した職員が少なく、侵入を早期に把握する情報の入手経路が確立していない。

 今回のケースは侵入経路が未解明で、特定外来生物の植物が新たに県内に入り込む可能性は否定できない。県は、警戒すべき植物に関する知識を持った人材の育成や、生産者の協力を得て情報を吸い上げる仕組みづくりが急務だ。

 県内では、裏磐梯や須賀川市の翠ケ丘公園などで環境保全活動に当たる地域団体が、特定外来生物に指定されるオオハンゴンソウの駆除に取り組んでいる。水辺の植物の観察会などを開いている市民グループもある。

 行政や農業関係者だけではマンパワーが限られる。ナガエツルノゲイトウなどをいち早く発見するための協力者となり得る、地域団体や市民との連携が必要だ。

 日本学術会議は昨年まとめた報告で、外来の草に対する公的対策について「主な目的は生態系被害防止であり、農業被害についてはほとんど対応できていなかった」と指摘した。生産者の対処能力を超えた外来種が侵入しているにもかかわらず、行政は防除対策を個人任せにしてきたといえる。

 公的な対策を進めるための裏付けとなる被害額や面積などに関するデータもない。国には、自治体と連携し、被害の全体像を把握することが求められる。

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